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住友林業が大臣認定を取得したが … なぜ問題が多発するのか

 住友林業は8月28日、国土交通省から是正措置を講じるよう求められていた木造軸組工法による準耐火建築物の間仕切り壁の国土交通大臣認定を取得したと発表した。

 是正措置は、同省から8月10日に大臣認定の仕様と異なる仕様で施工されたのは建築基準法違反であるとの指摘を受けて対応するもの。違反とされた3,524件に該当する。大臣認定では間仕切壁の石膏ボードの留め付け方法では下地組に胴縁を施工することになっているにも関わらず、同社は施工していなかった。

 同社はまた、8月24日に指摘を受けた枠組壁工法の準耐火建築物の大臣認定の不適合施工についても大臣認定の取得に向けた手続きを進めているとしている。対象となるのは1,437件。この問題では、45分準耐火構造の間仕切壁の施工では石膏ボードを留める際のくぎやねじの長さを規定しているが、同社は規定の寸法より短いビスで留めていたのが建基法違反と指摘されている。

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 同社が大臣認定を取得したと発表したこの日、記者は管轄の国交省住宅局建築指導課に一連の不適合問題でレクチャーを受けに訪れた。認定取得は担当の職員から聞いた。これでまずは一件落着となるのか。それとも少なくとも施工してから大臣認定を取得するまでの間は違法状態だったはずだから、同社は責任を追及されるのかどうか。東日本ハウスも大臣認定を取得する模様だ。

 それにしても同社もアキュラホームも東日本ハウスもどうしてこのような不祥事を起こすのか。胴縁がなくてもビスの長さが数ミリ短くても耐震性など構造躯体にはなんら問題がないはずで、重大視しなくてもいいようにも思う。しかし、「悪法も法なり」という言葉があるように法律を守ることは基本中の基本だ。「現場の大工が知らなかった」「適法だと思っていた」「現場の施工マニュアルになかった」では済まされない。二度とこのような問題を起こさないようしてほしい。(ただし、記者は現行の耐火基準は厳しすぎると思う。規制を緩和して一般住宅の木造化を図るべき)

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 日本国民を震撼させた構造計算書偽装問題でこの業界は懲りているはずなのに、その後も違反事例は後を絶たない。列挙してみよう。

・ニチアス事件(2007年) 防火用軒裏天井、耐火間仕切壁の準耐火・耐火認定番号の一部を不正取得。旭化成ホームズは約4万棟の改修に追われた。ニチアスは300億円の経費を計上した。

・六会コンクリート問題(2008年) 不適切な材料を使用したJIS規格に適合しないレディーミクストコンクリートを出荷。神奈川県を中心に29物件の建築基準法違反が分かり、多くのマンションなどの工事・販売が中断した。

・新日軽・三協立山・エクセルシャノンの大臣認定不適合(2009年) ビル、マンションの開口部製品が国土交通大臣認定に不適合。国交省は不動産業課課長の「依頼」として「建築基準法に規定される性能を満足しない構造方法等が用いられていたことは、たいへん遺憾であり、断じてあってはならないこと」と関係各方面に通知した。

・一建設、アーネストワンの戸建て壁量・耐震強度不足問題(2009年) 一建設の戸建て1,365件で壁量不足、アーネストワンの戸建て465件で壁量不足・耐震強度不足が発覚。設計した建築士が処分受ける。

・ YKK AP、新日軽、不二サッシが大臣認定違反(2011年) 防火設備(アルミ樹脂複合窓)が性能確認試験に不合格、大臣認定仕様とは異なる仕様の製品が販売されていたことが判明。

 このような不祥事を繰り返していれば、業界はどこからも信頼されなくなる。どうして次々と問題が発生するのか、再発防止には何が必要なのか考えないといけない。

(牧田 司記者 2012年8月29日)