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山万の思想・哲学を見た

「ユーカリが丘 スカイプラザ・ミライアタワー」


「ユーカリが丘 スカイプラザ・ミライアタワー」完成予想図

 山万が分譲中の「ユーカリが丘 スカイプラザ・ミライアタワー」を見学した。清水建設の免震工法・SIを採用した同社の思想・哲学が盛り込まれているマンションだ。

 物件は、京成線ユーカリが丘駅から徒歩6分、佐倉市ユーカリが丘4丁目に位置する31階建て全411戸の規模。現在分譲中の50戸の専有面積は55.28〜111.10u、価格は2,150万〜6,720万円(最多価格帯2,900万円)。平均坪単価は150〜160万円。竣工予定は平成25年10月下旬。設計・監理・施工は清水建設。7月に分譲した1期80戸は完売している。

 「同社の思想・哲学が盛り込まれている」と書いたが、まずその第一は清水の免震工法・SIを採用していることに現れている。同社の駅前のタワーマンションはこれで5棟目だが、過去の4棟は鹿島の施工だった。わが国を代表するスーパーゼネコンを選ぶところがいかにも同社らしい。大手デベロッパーや鹿島(鹿島は千葉で自社分譲マンションを供給している)を除き、千葉県でスーパーゼネコンに発注するデベロッパーはまずいない。

 第二は、商品企画・プランだ。基本性能・設備仕様は同じ千葉県内の郊外マンションと比較すると、比べようもなく高い。首都圏で初の「顔認証入館システム」を採用、天井高を2600ミリ確保しているほか、玄関・トイレに手すりを設置、ビューバスをたくさん設け、全浴室にテレビを標準装備している。こんなマンションはやはり千葉県内で探すのが難しい。

 細かなところでは、佐倉の花火大会を満喫できるよう約9uのスカイデッキを設けたものや、約4.2畳大の多目的に利用できるアトリエを設置したタイプもある。また、非常時の自家発電は3日間稼動できるもので、太陽光パネルはもちろんグリーンシェード、雨水・井水の再利用など環境対策もしっかり施している。

 単価が高いか安いかは市場が決めることだが、千葉の郊外で分譲されている物件と比べると、基本性能・設備仕様からして極めて安いマンションだ。 千葉県で初の「長期優良住宅認定マンション」となったのも頷ける。


スカイテラス

◇     ◆     ◇

 取材を終えた帰りの電車の中で、新築未入居マンションの中釣り広告が目に止まった。4年ぐらい前に分譲開始された大規模物件で、モデルルームとして使用されたことを理由に500万円以上値下げされていた。単価をはじいたら80万円強だった。

 記者は、このマンションのモデルルームを分譲開始時に見学している。坪単価は110万円ぐらいだった。あまりにもレベルが低かったので記事にすることはやめた。「これじゃ売れない」とも思ったし、そもそもこんなマンションを分譲するのなら事業そのものをやめるべきだとも思った。

 千葉県のマンションが一部の大手物件を除き売れないのは、デベロッパー自身にも問題がある。自らが率先して価格競争に走り、どんどんレベルを下げる。売れないとすぐ値下げもする。これではユーザーの支持を得られるわけがない。それだけに山万の仕事がキラリと光る。

◇     ◆     ◇

 話が横道にそれてしまった。元に戻す。山万・ユーカリが丘を記者はほれ込んでいる。同社の事業やユーカリが丘についてはマスコミもたくさん紹介しているので省くが、昭和50年代の開発団地でいまだに進化し続けている団地は全国どこを探してもないはずだ。

 記者は10年ぐらい前、駅前の山万グループのウィシュトンホテルのスイートに1週間泊めてもらい取材をしたことがある。現地をくまなく回り、たくさんの関係者からも話を聞いた。感動的な取材をすることができた。

 そのときの取材で驚いたのは、分譲撤退型の開発手法でなく、会社も社員も退路を断って団地の開発・管理をコントロールしながら進めていく手法が取られていることだった。同社が人口ピラミッドを毎月チェックしているのもその一つで、高齢者人口比率を抑制し、年少人口を増やすために若年層のマンションなども計画的に供給していることを知った。

 今回の取材で案内してくれた同社の街づくり推進室リーダー・谷早奈江さんにこのことを話したら「現在の高齢者人口比率は19%ぐらい。この5年間で11歳以下の子どもは344人増えた。親が団塊世代のお子さんが結婚してここに戻ってくる人も多いし、団地内外を含めマンションや戸建てからの買い替えは2〜3割」とよどみなく話した。

 谷さんはまさに街をマネジメントする部署に所属しているから高齢者人口比率の数字を即座にはじき出せるのだろうが、なかなかできることではない。「社員の半数以上がユーカリが丘に住んでいるんじゃないのかしら」とも語った。 

 10年前の取材のとき、それこそすべてを取り仕切ってくれた林新二郎常務が「僕は会社のためなのか、自分のためなのか、地域のために働いているのかよく分からない」と冗談交じりに話したのを忘れないが、会社のためでもあり、自分のためでもあり、社会のためでもあるという仕事をするのがサラリーマンの夢だ。

 ウィシュトンホテルについてだが、「おもてなし」はどこのホテルにも負けないと思う。ホテルのロビーでうろうろしていたら、女性スタッフが走ってきて対応してくれた。このとき走るホテルウーマンを初めて見た。ユーカリが丘を取材するときは必ず寄ってコーヒーを飲む。冠婚葬祭で一人勝ちしているだけでなく、最近は海外出張のサラリーマンが成田でなくここを利用するケースが増えていると聞いた。ユーカリが丘には何でもあるからだという。


モデルルーム

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 脱線ついでにもう一つ書くが、最初から山万はこのようなしっかりした団地マネジメントを行っていたわけではない。昭和54年の分譲開始時に取材したことがある。同社はハウスメーカーや建売住宅会社に宅地の卸売りを行った。「環境都市」が街の売りだった。最初は100戸、200戸単位で分譲されたはずだ。なかなか売れないときで、すぐ値下げ乱売合戦となった。立て看、捨て看が林立し、あちこちに倒れてもいた。

 その様子を見て、記者は「看板倒れのユーカリが丘」という大見出しの記事を書いた。良かれと思って書いた記事で、抗議・苦情は覚悟の上だった。

 ところが、その記事が各社の間で話題になったそうで、以後は乱売合戦をやめようという動きに変わったことを聞いた。

◇     ◆     ◇

 もう一つ、余分だが、これは絶対改めてほしい。メインストリートのクスの街路樹が悲惨な姿をしていることだ。ひどい剪定がされていた。街路樹を管理しているのは佐倉市だが、山万も地域住民も街の価値を引き下げないために市と協議してまっとうな街路樹に育てるべきだ。記者が住む、同じ開発から40年の多摩センターのパルテノン大通りのクスと比べてほしい。これだけは多摩センターが勝てる。


無惨な姿の街路樹

奇跡の街℃R万「ユーカリが丘」 新しい試みマンション(2008/7/31)

(牧田 司記者 2012年9月11日)