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迷走する「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」

コミュニティや議決権などめぐり激しい論議


「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」

 ダッチロールを繰り返しついに迷走状態に突入−−国交省の第9回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」が8月29日行われたが、@標準管理規約に盛り込まれている「コミュニティ」の文言は削除すへきA議決権の割合は現行の専有面積割合や各住戸平等ではなく眺望や景観などの付加価値を反映させた価値割合に変更してはどうかB新築マンションの分譲段階で専門家の活用を選択メニューとして加えるべき−−などこれまで論議されたこともない意見が飛び出し、委員サイドと現場サイドで激しいやり取りが交わされる場面もあった。

 国交省はあと1、2回の会合で意見を取りまとめたいとしているが、果たしてソフトランディングできるのか。予断を許さない段階に差し掛かった。

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 各委員には事前に資料が配布されていたのかもしれないが、当日、傍聴者にも配布された資料をみてびっくりした。これまでほとんど論議されなかった @地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成の取扱A価値割合に応じた議決権割合、土地持分割合、共益費等の設定B新築マンションの外部専門家の活用−−などが盛り込まれていたからだ。

 @については、「明確な定義や管理との線引きが難しいことから、現行の文言のままの標準管理規約や同規約のコメント(解説)は削除する方向としてはどうか」とあり、自治会費の徴収の改善として「判例のようなトラブル、訴訟が繰り返されないよう、個々のマンションの事情も踏まえながら、徴収方法の改善を検討してはどうか」と意見が述べられていた。

 Aについては、「現行の標準規約では、議決権割合は床面積割合となっているが、例えば超高層マンションの高層階と低層階とでは、床面積割合によっては住戸の財産価値(眺望、景観等の付加価値)が適正に反映されていないとの指摘がある。物件が多様化し、住戸間の規模、価格等のバリエーションの大きいマンションの供給が近年進んでいることを踏まえる必要があるのではないか」「土地の持分は価値比例で設定し、価値・土地持分・議決権の割合・共益費(管理費)の負担割合をセットで考えるべきではないか」とある。

 Bでは、「今後販売される、新築マンション等において、外部の専門家の活用を希望する場合、管理者や理事会の役割はどうあるのが望ましいか。例えば、大規模で資力のある新築マンションではどうか」と述べられている。

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 @について「削除」すべきとしたのが村辻、安藤委員ら。管理費が餅つき大会や夏祭り、その他町内会活動費に充当されるのは財産管理団体としての組合活動の目的外使用に当たるというのがその理由だ。

 これに対して、村、鈴木、廣田氏など専門委員・オブザーバーなどが反対した。村専門委員は「新築マンションの立場から言えば、コミュニティに対するニーズは高い。マンションの資産価値を高めるソフトになっている。今後もコミュニティ形成のイベントをサポートする活動を積極的に進めていく」と語った。廣田オブザーバーも「入居者の高齢化が進み、コミュニティ形成は益々重要になってくる。合意形成にも欠かせないもので、震災後は町内会活動に積極的に関わるところも増えている」と話した。

 一方、村辻委員は、「標準規約にコミュニティが盛り込まれていることによってさらに混迷を深めている。コミュニティを軽んじているわけではないが、組合がコミュニティ活動の主体になるのは問題」などと語った。

 (この問題については記者は何度も書いてきた。確かに区分所有法をどのように解釈しようと、コミュニティ活動や自治会・町内会活動に組合が主体となって参加するには問題がある。しかし、組合活動をした人なら誰でもわかることだが、コミュニティ活動は組合活動と不可分のものだ。法律をあれこれ解釈し足を縛るのではなく、双方が活発に行える方策を検討会は打ち出すべきだ。会合のあとで、坂本努・市街地建築課長が「理窟もあるし現場もある。コミュニティは社会全体でも重要視される方向にある。これから各方面に話をよく聞いて、双方を調和させたい」と語ったのは当然だ。記者は国交省が主導して結論を出すべきだと考える)

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 Aについても、村氏は「価値観はそれぞれ異なるし、マーケットにより価格は変動する。中古価格も変動する。技術的にも難しい」と、価値割合に応じた議決権割合の採用には疑問を呈した。村氏はBについても、「どうしてこのような意見が出てきたのか。唐突で違和感を覚える。管理コストにシビアになっている入居者や管理会社にこれ以上の負担をかけることに同意が得られるのか」と語った。

 (Aは面白い提案だとは思うが、現実的でない。仮に価値割合に応じた議決権方式を採用すれば、タワーマンションなどでは1 :10どころか1: 20ぐらいになるものも出てくる。それほど議決権の重さに差をつけていいのかどうか。1票の重さが問題になっているが、少なくとも同じ選挙区の住民間では1票の重さは同じだ。記者は、一見合理的と思えるこのような価値割合による議決権方式の採用には反対だ。村氏が話したように、技術的にも困難を極めるはずだ。

 これに関連して、ある委員は「エレベータの管理費用は利用しない1階の人などに余分の負担を強いるもの」と語ったが、これなどは論外だ。マンションという共同生活をまったく理解していない。共用施設全体にも言えることだが、エレベータがありきちんと管理することがマンション全体の資産価値を維持しているのであって、利用しない人もする人も平等に管理するというのは理にかなっている。最近は居住階しか停まらないマンションも増えているが、利用する人だけ費用を負担することなど不可能だ。「みんなが一人のために、一人がみんなのために」というのがマンションの共同生活の基本だ。「わたしは利用しないから価格を下げろ。管理費を安くしろ」などと言い出したらどうなるのか。

 @ についてもAについても同様。自分勝手の合理主義を貫けは、居住者間はもちろん地域や街のコミュニティをズタズタに切り裂き、活力をそぎ、やがてはそのマンションの価値すらも減じることにつながるはずだ。マンション単体で価値を維持・向上させるのは絵空事に過ぎない)

機能不全マンションに第三者管理方式は適当か(8/3)

管理協地域共生セミナー 「組合と自治会は車の両輪」(2011/9/20)

(牧田 司記者 2012年8月30日)