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埼玉県 マンション環境性能表示の最高ランク「S」は現在ゼロ



インセンティブを与え制度の普及促進図れ

 埼玉県が床面積2,000u以上のマンションを対象とする「分譲マンション環境性能表示」制度を昨年7月にスタートさせて1年以上が経過したが、これまで最高ランクの「S(すばらしい)」を取得したマンションはゼロで、ほとんどがSに次ぐ「A(大変よい)」にとどまっていることが分かった。

 同制度は、省エネルギーや緑化対策など総合的な環境配慮の取り組みを促すとともに「CASBEE埼玉県」による格付け・評価の高いマンションに対しては住宅ローンの金利優遇を行うほか、建基法の総合設計制度での容積率の割増優遇をさらに上回る優遇を受けられるようにしている。

 埼玉県のホームページによると、「分譲マンション環境性能表示」制度をスタートさせる前までの同様の制度「建築物環境配慮計画書届出」を含めても「S」を取得したマンションは1物件もない。 

 「A」では、コスモスイニシア「朝霞三原一丁目」、三井不動産レジデンシャル「さいたま市南区南浦和三丁目」、東京建物「越谷レイクタウン2」、コスモスイニシア「新座市野火止」、東レ建設「三郷市三郷中央」、東急不動産・三井不動産レジデンシャル「川口市金山町12番地地区」、大京「ライオンズふじみ野2」、フージャースコーポレーション「戸田本町5丁目」など10物件近くある。

 マンション以外の他の用途では、「東部地域振興ふれあい拠点」(春日部市)、「早大本庄高校」(本庄市)、、「三郷インター公園施設」(三郷市)、「獨協大学学生センター」(草加市)、「県立がんセンター新病院」(伊奈町)が「S」を取得している。

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 同様の環境性能表示制度を行っているのは首都圏では現在、埼玉県のほか神奈川県、横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市、柏市などがあり、東京都は独自の「マンション環境性能表示制度」を採用している。千葉県には制度がない。

 行政が「CASBEE」に準拠しながら独自の環境性能表示を行うのは結構なことだが、マンションを購入する側からすれば、バラバラの制度では分かりづらい部分もある。これまで最高評価や高評価を得たマンションを取材した範囲内では、東京都の表示制度は事例がたくさんあるし分かりやすい。

 それに比べて埼玉県、神奈川県、横浜市、川崎市などは「S」が少ないのが気になる。「S」ランクは、「CASBEE かながわ」の長谷工コーポレーション他「ブリージアテラス淵野辺」(220戸)、「CASBEE横浜」の三菱地所レジデンス他「M.M.TOWERS FORESIS 」(1,226戸)、野村不動産「プラウド綱島」(99戸)、東京建物他「Brillia City 横浜磯子」(1,230戸)、「CASBEE川崎」の東京建物「Brillia e-SQUARE」(129戸)しかない。

 「S」ランク取得のハードルが高いのか、それとも「S」取得を目指すデベロッパーが少ないのかいまひとつ理由が分からないが、「A」のハードルはそれほど高くないという印象を受ける。「S」ランクのマンションがユーザーにも支持され、デベロッパーもどんどん取得を目指すようになってほしい。容積割り増しのほか、固定資産税・都市計画税の減額などインセンティブをもっと与えてもよい。さらに言えば、マンションの本来的な質である居住面積やユニバーサルデザイン、コミュニティ形成、防犯・防災なども評価項目に追加して表示すればもっといい。

三井不レジ 「マンション環境性能表示」2物件で星3つ(8/28)

(牧田 司記者 2012年8月28日)