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「Rio+20 記念シンポジウム」に300人

産官学が連携して森林・林業再生を


「Rio+20 記念シンポジウム〜森と木を活かす『グリーンエコノミー』の創出に向けて〜」(経団連ホールで)

 国土緑化推進機構、美しい森林づくり全国推進会議、経団連自然保護協議会の主催による「Rio+20 記念シンポジウム〜森と木を活かす『グリーンエコノミー』の創出に向けて〜」が6月29日行われ、企業やNPOから関係者約300人が参加した。

 6月には「グリーンエコノミー」を主要テーマとした「国連持続可能な開発会議」(Rio + 20)が開催され、木材の持続的な利用に関する国際的な取り組みが期待されているとともに、国内では平成23年から木材自給率50%を目指す「森林・林業再生プラン」が本格的にスタートしている。シンポジウムはこうした国内外の取り組みの情報共有や連携・協力を促すために開かれたもの。

 東京農大教授・宮林茂幸氏(美しい森林づくり全国推進会議事務局長)と林野庁林政部長・末松広行氏がそれぞれ基調講演を行ったほか、経団連自然保護協議会企画部会長兼政策部会長・ 石原博氏が経団連の取り組みを紹介した。また、三井物産環境社会貢献部理事・青木雄一氏、イトーキ ソリューション統括部・エコニファ開発室長・末宗浩一氏、九州旅客鉄道施設部設備課長・峯雅彦氏がそれぞれ事例紹介を行い、宮林氏がコーディネーターを務めたパネルディスカッションも行われた。

 主催者を代表して、美しい森林づくり全国推進会議代表・井出伸之氏は「世の中はグローバリゼーションが進んでいるが、わが国は地勢学的には世の中のバリューの真ん中にいる。この際、腹を据えて森林に取り組もう」と呼びかけた。

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 パネルディスカッションが終わったあと、宮沢教授に感想を求められた岩手大教授・岡田秀二氏は「今日ぐらい一生懸命勉強したことない」と語った。岡田教授は「森林・林業再生プラン推進会議」の座長を務めた。その本人が一生懸命になって聞いたぐらいだから、素人の記者は必死だった。4時間近くそれこそ必死でメモを取った。(岡田教授の感想は宮林教授へのお世辞≠烽るのだろうが、いかにも真剣だったように話した。農学部の教授はこのような人が多い。もう一度、大学に入るなら絶対農学部だ)

 その甲斐があって大きな成果があった。宮林教授の講演は2回目だが、冒頭で「これからも経済至上主義を続けていくのか、それともグリーンの自然資本を基にした環境にやさしい循環型の社会経済の仕組みを構築するのか、その選択が迫られている」と訴えられたのには胸を突かれた。

 国交省と連携して公共建築物の木造化に建基法の弾力運用を含めて真剣に取り組んでいくという末松氏の講演は心強く思った。「隗より始めよ」だ。見本を示してくれることに期待したい。

 また、限界集落の再生に取り組んでいるイトーキ、安藤忠雄氏による熊本駅舎の建設など地産地消の活動を行っている JR 九州、わが国3番目の山持ち企業・三井物産の林業経営などの報告を聞き、それぞれの企業が森林・林業問題に真剣に取り組んでいることが伝わってきた。

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 森林・林業の再生には産官学が連携して情報を共有し、多面的でダイナミックな展開をすることが必要と各氏が述べた。その通りだろうと思う。しかし、「社有林の80%を占める北海道は数年後には収支トントンになるが、本州は黒字化が難しい。集約化・大規模化を進めないとだめだろう」と三井物産・青木氏が話したように、前途は容易でないことも分かった。

 かといって、末松氏が話したように補助金頼りの林業も限界がある。わが国の森林の公益的経済価値は年間70兆円あるといわれているが、この価値を経済活動にどう結び付けていくのか、英知を絞ってほしい。


基調講演をする宮林教授

深刻な国産材 スギ、ヒノキの価格が暴落 林野庁会議(6/28)

「国土が崩壊し文化の解体も始まった」東京農大・宮林教授(2011/3/1)

(牧田 司記者 2012年7月3日)