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深刻な国産材市況 スギもヒノキも価格暴落 林野庁


「平成24年度 第1回 木材需給会議」

 林野庁は6月27日、「平成24年度 第1回 木材需給会議」を開き、直近の木材需給の動向や今後の見通しについて協議した。全般的には震災復興需要や住宅着工の回復傾向からほぼ前年並みとしながらも、経営的には厳しいとする報告が相次いだ。

 深刻なのは国産材だ。平成24年4月のスギ丸太販売量は前年同月比4.2%減の約53万立方メートルで、ヒノキ丸太販売量も前年同月比2.2%減の約14万立方メートル。販売量そのものは微減にとどまっているが、問題は販売価格だ。スギ材は5月が10,100円/?(前年同月比11.4%減)、ヒノキ材が12,600円/?(同30.0%減)と大幅に下落している。ヒノキの土台・柱などが集成材に置き換えられているのが主な理由のようで、市況は「超緩和状態にあり、好転はない。秋以降、もう一段、二段の下落があるかもしれない」と報告された。

 集成材も同様だ。「ヨーロッパの市況が悪く、深刻な状態。単価は45,000円/?を割ってきている。国産材も崩壊状態。(製造を)やればやるほど損が発生する」と報告された。

 ロシアなどの北洋材も壊滅状態にある。2007年には約390万立方メートルあった輸入量は2011年には33万立方メートルに、実に10分の1以下に減っている。今年もさらに30万立方メートルに減ると予測されている。

 激減している理由は、ロシアが針葉樹の輸出税課税を強化しているためのようだ。2007年6月までは6.5%だった税率を2007年7月から20 %に一挙に引き上げ、2008年4月からはさらに25 %に引き上げた。その後は25%据え置かれているが、同国が80%まで引き上げる方針を打ち出したことから、不安になった国内メーカーが材料を米材や国内材に切り替えたため輸入が激減しているという。

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 わが国の木材の需要(供給)量を丸太換算したデータを林野庁は6月26日に発表した。それによると、総需要量は7,272万5千立方メートルで、前年比3.5%増加した。内訳は国内生産量が1,936万7千立方メートル、輸入量は5,335万8千立方メートルで、前年に比べそれぞれ6.2%、2.6%増加。輸入量に比べ国内生産量の増加率が高かったことから、木材(用材)自給率は前年に比べ0.6ポイント上昇し26.6%となった。

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 森林・林業について取材を始めたのは昨年からで、「木材需給会議」を傍聴するのは初めてだった。延々2時間にわたり、丸太やら中目やら製材やらよく分からない木材に関する9つもの資料説明を聞かされのには正直うんざりした。もっと活発な論議がされると思っていた。傍聴している記者らしき人は10人もいなかった。それでも深刻な状態にある国産材の現状を少しは分かったような気がした。円高が進めばますます国産材は苦戦が強いられるのではないか。

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 会議が行われた農水省の庁舎に入るのは初めてだったが、「これは古い、職員がかわいそう」というのが第一印象だった。いつも取材する国交省とはえらい違いだ。

 後で調べたのだが、庁舎が建設されたのは1954年。1939年に建設された「大蔵省」(現財務省。こちらは室内に高級材が使われていたのを覚えている)は別にして、各省庁舎の中で最も古いという。いわゆる旧耐震だ(もちろん耐震補強はなされているのだろうが)。

 節電の折から廊下などは暗く、自動販売機が設置されている小部屋は明かりが消されていた。コーヒーを飲もうと思ったが、アイスだかホットだか砂糖入りだか表示がまったく読めなかった。利用する都度、明かりをつけたり消したりするのだという。値段は60円だから安い。

 壁には「本日は全省庁 一斉の定時退庁日です」とあり、エレベータの前には「今日は歩こう 健康と環境のため」という木のイラストが入りの張り紙があった。2階に設置されている喫煙室はうなぎの寝床のようで、暗くて狭いガス室のようなものだった(国交省のある合同庁舎の喫煙室もひどい。明かりは消されており、真冬でも窓は開け放たれている。どうして喫煙者をここまでいじめるのか。同じ霞ヶ関でも男女別々になっている霞ヶ関ビルは天国だ)。職員が着ている洋服もみんな平服だから、とても高級官僚とは思えない格好をしていた。

 「農本主義」という言葉があるように、農業こそが国の基盤を支える産業だと田舎育ちの記者は教えられてきた。「農林大臣になって、貧しい農村を豊かにする」のが小さい時の夢だった。このような古い庁舎と劣悪な労働環境を見せられて、なんだかわが国の寂れ行く農林水産業を象徴するようで悲しかった。そういえば、最近の農水相は小物ばかりではないか。

 唯一、素晴らしいと思ったのは、廊下の壁に無垢の腰板が張られ、ドアも無垢材が用いられていたことだった。

(牧田 司記者 2012年6月28日)