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マンションコミュニティ活動と現行法制度の関係探る

マンション長寿命化協議会が論議・提言へ


山根理事長

 マンション長寿命化協議会(座長:齊藤広子明海大教授)は、「管理組合の業務範囲に現行法制度は即応しているか」をテーマに論議し、来年の春までに提言としてまとめることを発表した。6月27日に行われた高層住宅管理業協会(理事長:山根弘美ダイワサービス社長)の記者懇親会で、同協会が明らかにした。同協議会は昨年6月、管理協によって設立された。10人の委員から構成されており、「マンションに安心して長期に住まうための新たな仕組み課題」が管理協から諮問されている。先に、第一弾として住生活総合サービスに関する研究報告書がまとめられた。

 配布された資料によると、同協議会は「マンションの居住者の高齢化が進行し、永住志向が高まる中、安心で豊かなマンションライフの実現のために良好なコミュニティ形成が欠かせなくなっており、マンションの管理組合にも従来の役割を超えた活動が求められている。

 一方で、現行法制度の規定はこうした時代の要請に即応しているとは必ずしも言えない。特に、自治会の入退会および会費徴収において、任意加入を原則とする自治会の費用徴収を管理組合が行うことを否定する趣旨の裁判例もあり、求められる管理組合の役割の障害となっている現実がある」とし、「コミュニティ形成に資する管理組合活動の実情や将来像について考察し、現状の課題や解決策について議論を行う」としている。

 この問題について山根理事長は、「区分所有法第3条で管理組合は財産管理団体と規定されているが、実際の活動ではコミュニティ活動は当たり前のこととして行われている。3.11でも経験したように地域との絆がなければマンションの財産も人の命も守れないことが分かった。これは自明の理だ。マンション居住者は1,400万人もいる。当協会はこれらの方々をサポートするためにも、協議会の委員の意見をまとめたい」と話した。

 また、山根理事長は、記者団の「高齢者の見守り・声かけ活動」について「Good Samaritan Doctorineという言葉があるように、災害時、非常時の支援は管理会社の業務の外、法律の外にあることとして一歩踏み込むことも必要」と述べた。

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 管理協と同協議会がコミュニティ支援のため論議することに喝采を送りたい。この問題についてはしばしば述べてきたが、管理組合活動をやった人なら誰もがぶち当たるのがこの問題だ。コミュニティ活動をやればやるほど区分所有法の規定に阻まれる。夏祭りや夜回り、町内会の行事などてトラブルや事故などが起きたとき、管理組合が主催したり共催していれば間違いなく管理責任が問われる。記者などはいつもヒヤヒヤしている。

 財産管理団体としての管理組合の活動と、コミュニティ活動はいわば車の両輪だ。どちらかが欠けてもマンションの価値は保てないと確信している。

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 この問題について、全国マンション管理組合連合会(穐山精吾会長)は5月31日付の奥田建・国交副大臣宛の「『マンションの新たな管理ルールに関する検討会』への要望」の中で次のように述べている。

 「特にコミュニティ活動は自治会が行うべきものと決め付けるような意見が見られますが、標準管理規約第32条における管理組合の業務の中に十五 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成≠ニいう条項によって、管理組合がコミュニティ活動を行うことが明記されています」

 記者は法律には疎いが、「標準管理規約」は国交省が示した見本のようなもので、法律ではない。規定そのものも極めてあいまいだ。「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成」といわれて、いったいこの活動がどのようなものをさすのかさっぱり分からないだろう。拡大解釈すればあらゆる活動が認められるはずだが、ならばどうして自治会費(町内会費)の代理徴収が違法とされるのか。同連合会の主張は理解できるが、法的根拠が弱い。

 記者は区分所有法を何度も読んだが、やはり「財産管理団体」と解釈するのが妥当だと思う。法にはコミュニティの「コ」の字もない。゜財産管理団体」と「コミュニティ形成」を結び付けるには法の改正しかないと思う。ただ「コミュニティ」なるものは、法律にはなじまない概念のような気もするが…。

管理協 住生活総合サービスに関する研究報告書(4/23)

(牧田 司記者 2012年6月28日)