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国交省 「不動産流通市場活性化フォーラム」提言に思う

基本的には消費者が賢くなることが活性化につながる

 国土交通省は5月22日、第6回「不動産流通市場活性化フォーラム」(座長:中川雅之・日大教授)を開き、三つの柱からなる提言の骨子(案)をまとめた。

 一つは、円滑な不動産取引のために必要な情報の蓄積と提供についてで、@消費者にとって必要な情報の整備・提供A情報の蓄積・開示方法の統一化・標準化B消費者に分かりやすい情報提供のあり方を提言している。

 二つ目は、消費者ニーズに対応できる不動産流通システムの整備で、@取引の中核を担う宅建業者の総合コンサルティング機能の向上A消費者ニーズの増大する分野を担う専門事業者の育成B価格の透明性の向上C流通を契機としたリフォームの実施−をあげている。

 もう一つは、不動産流通市場の活性化に向けた環境整備についてで、@宅地建物取引業者及び従業者の資質の向上A多様な手段による既存ストックの有効活用の促進B瑕疵担保履行法に基づく保険の活用−を示している。

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 流通市場にはうとく、この「フォーラム」の取材はほとんどしていないので、コメントのしようがないが、これからは間違いなく中古流通の時代になるだろうから、消費者に分かりやすい市場にするのは当然だろうと思う。いくつか、気になることを指摘したい。的外れだったら謝るしかない。

 まず、消費者にとって必要な情報の整備・提供について。これは以前にも書いたが、記者はマンションの評価・評判や口コミ、住まいに関する情報をWiki形式でまとめて見られるサイト「住適空間(ステキクウカン)」に期待をしている。不動産専門掲示板「マンションコミュニティ」などを運営する「ミクル」(福井直樹CEO)が平成22年7月に開設したものだ。トップページの体裁はどこか「Wikipedia」に似ており、自由に記事を作成、編集できるのも「Wikipedia」そっくりだ。

 1年前のアクセス数は月間約20万件だということだったが、物件の数がどんどん蓄積されれば、中古マンション情報としても貴重な情報源となるのは間違いないとみている。これと、レインズシステムを組み合わせれば、面白い展開が出来るのではないか。基本的には、消費者が賢くなることが業界を動かし、市場を活性化させると考えている。

 消費者ニーズに対応できる不動産流通システムの整備だが、これはかなり立ち遅れているように思う。大手流通会社は「総合コンサルティング」を謳うが、ワンストップで消費者のニーズに応えられるスタッフはまだまだ少ないのではないか。新築も中古もマンションも戸建てにも精通する営業マンの育成は急務だと思う。価格の透明性は、何をもって透明というのかよく分からない。不動産に限らず、価格は生き物で絶えず動くし、基本的には市場が決めるものだ。価格査定マニュアルもそれほど当てにならないのではないか。

 流通市場の活性化に向けた環境整備は、言うまでもないことだろう。ただ、新たな全員取得資格制度などの検討というのはどうか。従業者の資質の向上は大事だが、これ以上資格制度を増やしてどうなるのか。宅建資格だって形骸化しているといえば怒られるのだろうか。

Wiki形式の「住適空間(ステキクウカン)」の可能性(2011/5/24)

(牧田 司記者 2012年5月23日)