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街路樹が泣いている 〜街と街路樹を考える〜 C

植栽枡・ツリーガードだけ クスは高さ5m 柏の街路樹


「パークシティ柏の葉キャンパス一番街」

 写真は、三井不動産レジデンシャルの2008年に竣工した柏の葉キャンパス駅前の「パークシティ柏の葉キャンパス一番街」(全5棟977戸)の中庭を撮ったものだ。竣工後4年しか経過していないが、見事な景観だ。柏の葉キャンパス周辺の街路樹も同様だ。新緑の季節を迎えて、みんな生き生きとしている。

 ところが、旧市街地は様相が一変する。次の写真は、駅前の 「 そごう」の裏側「市役所通り」を撮ったものだ。ヤナギと思われる街路樹はなく、植栽枡とツリーガードだけが残っていた。数えたら、7〜8カ所はあった。樹木の枯れ具合からして伐採後2〜3年は経過していると思われた。

     
市役所通りのヤナギと植栽枡とツリーガードだけが残っている街路樹

 さらに駅に近い一丁目付近のトウカエデやクスノキの街路樹は、樹高が5〜6mの街灯の高さと同じぐらいの低さに剪定されていた。土壌にもよるだろうが、トウカエデもクスノキも成長すれば20m以上になる高木だ。

 街路樹が伐採され、強剪定されているのは、あまり広くない道路事情や沿道住民などからの苦情によるものと思われる。

 さらにもう一つ。柏駅東口のぺデストリアンデッキから視界に入る180度の景観にはまったく緑がない。こんな駅も珍しい。

 市の行政資料によると次のような記述がある。「街路樹は良好な景観形成、季節感の演出 … などの効果があるいっぽう、民有地への枝張り出し通行の支障、倒木の危険性、落ち葉の弊害、見通しや電波の障害、病害虫と薬剤散布などのリスクやデメリットも … 定期的(経費面から概ね3年に1回程度)に剪定が必要 … 街路樹に関する苦情や要望は、平成20年度の215件から平成21年度は161件に減少 … 前年度より経費(7,145万円)は減少」

 つまり、街路樹は多くのメリットもあるが、リスク、デメリットも少なくないと並列的に捉え、住民の苦情を減らすため剪定を行った結果、このようになったと読み取れる。その一方で、行政資料には「せっかく伸びた枝を切るなと苦情を言われるなど、樹木に対するとらえ方が異なる」との記述もある。

 この文章には、いったいぜんたい、市内の街路樹に対する哲学、ビジョンがまったくない。 2 年も 3 年も伐採したあとを放置するなど、どうなっているのだろう。住民もそれをよしとしているのだろうか。

   
柏駅東口の街路(左)と柏駅東口2階のデッキ(デッキは柏レイソルの黄色で埋めるのだそうだ)

 先日の記事で「街路樹は街の品格、品性を映す鏡」と書いたが、渡辺達三・東大教授は「『街路樹』デザイン新時代」(裳華房、 2000年刊)で次のように述べている。関係者はこの言葉をどう受け取るだろうか。

 「それにしても、街路樹の状態はひどすぎます … 街路樹の心労≠ェ思いやられます」
 「冬になると電信柱のようなプラタナスやイチョウの街路樹をよく見かけます」
 「街路は、人と自然、物、情報とが、また地域と他地域、田園、宇宙、そして、現在と過去、未来とが綴り合わされ、それらが会合、交歓し、壮大な交響詩が奏でられる舞台となっていく」
 「今こそ、独りよがりの人間、人工システムに風穴を開け、大自然からの新鮮な空気をとり入れ、自然との親しい交流をはかっていく必要がある」

 この渡辺教授の言葉を少しでも理解すれば、街路樹を「切れ」「切るな」という住民の苦情≠ノ立ち往生は絶対しないと思う。

 前述の街路樹について市役所に確認したら、ヤナギは4〜5年前の集中豪雨でぐらぐらになり、倒木の恐れがあったので2〜3年前に5本ぐらい伐採したという。このほか、病気で弱ったため伐採したものが2〜3本あるとのことだった。トウカエデやクスノキは「地元商店街から看板が見えない、見通しが悪くなるので短くして欲しいという強い要望があるため剪定している」とのことだった。

 先日、温暖化で絶滅の危機にあるホッキョクグマも原告になって、地球温暖化は「公害」と日本環境法律家連盟などが東京地裁に訴えた報道があった。全国の街路樹が国や自治体を訴えれば勝訴する可能性があると記者は思うが、そんな訴えをしたところはないのだろうか。


高さが5mぐらいに剪定されたクスノキ

街路樹が泣いている 〜街と街路樹を考える〜B(5/10)

(牧田 司記者 2012年5月14日)