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「大成功に終わった」小宮山宏・FDC最高顧問(前東大総長)

アジア・アントレプレナーシップ・アワード 2012


「フェアウェル・レセプション」(三井ガーデンホテル柏で)

優勝はシンガポールのベンチャー 日本は入賞逸す

 世界をイノベーションで変えようとアジアの12の国と地域のベンチャー企業18社が集まって5月9日から開かれていたビジネスコンテスト「アジア・アントレプレナーシップ・アワード 2012」は11日閉幕し、優勝はシンガポール、準優勝はフィリピン、3位は台湾のそれぞれベンチャー企業が果し、それぞれ賞金300万円、150万円、50万円と東葛テクノプラザ3年無料入居権(優勝者のみ)、副賞のノートパソコン2台を獲得した。わが国からは5社が参加していたが入賞を逸した。会期中、約550人が参加した。

 同アワードは、一般社団法人フューチャーデザインセンター(FDC)、 TX アントレプレナーパートナーズ、東京大学産学連携本部、千葉県、三井不動産が主催して行ったもので、新産業創造都市の街づくりが進む柏の葉キャンパス(千葉県柏市)を舞台に行われていた。昨年12月、国の「環境未来都市構想」の一つとして選ばれた事業の一環として内閣府の支援も受けている。

 優勝したシンガポールの「Clearbridge BioMedics Pte Ltd」は、シンガポール国立大学から派生した企業で、最新鋭の技術を用いた次世代がん検診装置の開発を行っている。準優勝のフィリピンの「Neugent Technologies」はスマートデバイスの研究・開発を行っており、スマートホーム、スマートオフィス、スマートスクールの実現を目指している。3位の台湾の「WorkLohas Technology Co.,Ltd」は、ユーザーがあらゆるウェブページを恒久的に保存できるIT技術を開発している。

 アワードの終了後、柏市の市内で行われた「フェアウェル・レセプション」には関係者約200人が集まり、FDCの提唱者で最高顧問の小宮山宏氏(三菱総研理事長、前東大総長)が「大成功に終わった。すばらしい21世紀をつくるため起業家をアジアから育てるアワードを日本が行うことが大事。これからも継続して行っていく」と大会を総括した。

 また、三井不動産・菰田正信社長は「当社グループは、官・学と連携しながら柏の葉キャンパスで環境共生・健康都市・新産業都市の3つのテーマを軸に『スマートシティ』の街づくりを進めている。2年後に完成する駅前施設にもインキュベーション機能も装備する」と語った。

 挨拶に立った千葉県・森田健作知事は「県としても全面的に応援していく」と述べた。

     
小宮山氏                  菰田氏

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 最終日の11日は東大柏キャンパスに隣接する「東葛テクノプラザ」で行われた。記者は朝の9時20分から始まるエントリー企業によるプレゼンテーションから取材しようと出かけたが、取材は不発に終わった。ものの10分でリタイアした。まるでガラパゴスの珍獣かトカゲのような屈辱感、惨めさを味わった。

 「公用語は英語」なのがその理由だ。最初のプレゼンターは日本人だったので淡い期待を抱いたが、もちろん話したのは英語でしかも IT に関する報告だった。単語そのものはいくつか分かったが、内容はまったく理解できなかった。

 前夜には、参加者と話す機会があったらせめて「こんにちは」「こんばんは」くらいは公用語の英語でなく母国語で挨拶をしようと、「アニョハセヨー」(韓国語)「ツァオ シャン ハオ」(中国語)「サワッディ イイカ」(タイ語)「チャオ アィン」(ベトナム語)「スラマット バギ」(インドネシア語)「ナマステ」(インド語)などを必死で覚えたが、話すチャンスはなかった。

 わが国の5社の代表はちゃんと英語でプレゼンをやったのだろうし、語学力は審査対象に含まれていないのでハンディにはならなかったはずだが、これからは英語を話せないと世界に通用しないと痛感させられた。

 小宮山氏は、日本から入賞できなかったことについて、「残念だがベンチャーを歓迎する風土がわが国にはできていない。これがきっかけとなるようやっていきたい。3年もすれば変わるはずだ」と述べた。


優勝したシンガポールベンチャー(左から3人目と4人目)左端は日本HP・古森茂幹氏、左から2人目が村井勝・審査委員長、右端が各務茂夫・ノミネーション委員会 委員長(以下の写真も同じ)

   
2位のフィリピンチーム(左から3人目と4人目) 3位の台湾チーム(左から3人目から5人目)

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 柏の葉の「環境未来都市」報告書には「 2050年の柏の葉キャンパスの子供たちは、語学ばかりでなく国際的なリーダーシップの取れる人材として育ち、臆することなく世界へと飛躍し活躍する者が多い」と書かれているが、記者のような惨めな思いをさせないためにも英語、とりわけ英会話は即刻、小学生の段階から必須科目にすべきだ。


森田健作・千葉県知事(右端)から県知事賞を受賞したタイのベンチャー(受賞理由は元気だった≠ニか)

三井不他「アジア・アントレプレナーシップ・アワード」(4/23)

(牧田 司記者 2012年5月14日)