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三井不動産他 「アジア・アントレプレナーシップ・アワード」を開催

12の国・地域から18社が参加決定


大学ベンチャーについて語る各務教授

 一般社団法人フューチャーデザインセンター、 TX アントレプレナーパートナーズ、東京大学産学連携本部、千葉県、三井不動産は4月23日、新産業創造都市の構想のもとに街づくりが進む柏の葉キャンパス(千葉県柏市)を舞台に、アジア各国・地域のベンチャー企業が一堂に会するビジネスコンテスト「アジア・アントレプレナーシップ・アワード」を創設し、5月9日〜11日の3日間にわたって第1回大会を開催すると発表した。

 同アワードは、アジアの主要各国・地域から、世界をイノベーションで変えたいという熱い志を持ったテクノロジーベンチャー企業の起業家を日本に呼び込むことによって、アジアのみならず世界から起業家、ベンチャーキャピタル、あるいはインキュベータやメンターが集積するようなイノベーション創出の一大拠点の形成を目指す。昨年12月、国の「環境未来都市構想」の一つとして選ばれた事業の一環で、内閣府の支援も受けている。

 参加するのは、各国・地域の大学関係者・インキュベータが中心となって構成するノミネーション委員会(委員長:東京大学産学連携本部・各務茂夫教授)により選ばれたわが国の5社をはじめアジアの12の国と地域の18社。英語による事業プレゼンテーション、セミファイナルを経てファイナルへと進み、優勝(賞金300万円)、準優勝(同150万円)、第3位(同50万円)などが決定される。

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 登壇した各務教授は、「このような国際的なコンテストはどこでも盛んに行われているが、日本が主導するものはなかった。今大会をきっかけに高成長を続けるアジアのアントレプレナーの拠点となるよう目指す。かつてアントレプレナーーの賑わいにあふれていたわが国の輝きを取り戻したい」と、決意を述べた。

 各務氏は、わが国の代表的な企業とアメリカのそれぞれの創業年と時価総額を比較して紹介した。日立(創業1910)時価総額2.3兆円、トヨタ(1937)11.5兆円、キヤノン(1937)5.0兆円、ソニー(1946)1.5兆円に対し、IBM(1911)19.0兆円、Microsoft(1975)20.7兆円、Apple(1976)47.5兆円、Google(1998)16.5兆円だ。

 東大と米国・スタンフォード大学との比較にも触れ、東大の2010年の寄付金が129億円なのに対してスタンフォードは560億円、発明数は東大の573件でスタンフォードの467件を上回るが、ロイヤリティ収入は東大がわずか1.4億円でスタンフォードは52.4億円だ。

 これほど差があるのはわが国の国立大学法人化が2004年と遅れたのにも原因があるが、研究資金でも圧倒的な差をつけられていることを浮き彫りにした。

 話を聞いていて、時価総額が企業の優劣を測るモノサシではないが、ソニーもパナソニックもシャープも大赤字に転落したのはまさに「ガラパゴス現象」の象徴ではないかと思った。各務氏のトーンが上がっていたのは、世界から立ち遅れるわが国の産業界、学会に対する強いメッセージだと受け取った。記者などはいまだにfacebookなるものが世界に何をもたらしているのか理解できない。そもそもアメリカりの文化、モノサシを拒否する別の自分もいる。

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 アワードに参加するベンチャー企業の紹介資料を見て、各務氏が力を込めるのも分かった。 IT とかインターネット関連など記者にはちんぷんかんぷんの分野もあるが、素人でもわくわくするような新しい研究技術が発表されそうだ。

 いくつかを紹介する。わが国の「エー・イー・テック」(佐々木博社長)は、価格は現行の半額で、照度は2倍以上のLEDのサンプル販売を今年後半に開始するという。

 マレーシア・プトラ大学科学食品技術学部で学ぶ「Agro Science Resource」は世界初の天然フェノール由来の添加物によって、油で調理した食品を摂取しても、脂肪やカロリーの過剰摂取による肥満やその他の有害な影響を抑止する。

 シンガポール大学からスピンオフして設立された「Cleabridge BioMedics Pte Ltd」は、がん治療を飛躍的に進歩させる次世代がん診断装置を開発しているという。

 タイの「Flexoresearch Group Co.,Ltd」 はラミネート紙の紙と樹脂を分離する特殊な混合酵素を開発し、ラミネート紙をリサイクルする技術を発表する。

 日本の「スマートソーラーインターナショナル」(富田孝司社長)は、熾烈な競争が展開されているソーラーパワー市場で群を抜く安価な電力を供給する技術を開発したという。

 大会はメディアに公開され、一般の傍聴も可能なイベントもあるので、かなりの人が訪れるのではないか。

涙が出るほど嬉しい「柏の葉 環境未来都市提案書」(2/13)

(牧田 司記者 2012年4月23日)