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震災が価格設定を劇的に変える

三井不動産レジデンシャル「パークシティ武蔵小杉」

 
左から「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」、「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」、
今回の「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」完成予想図

 東日本大震災はマンションの値付けを劇的に変えるかもしれない。先日の三井不動産レジデンシャル「パークシティ武蔵小杉ザ グランドウイングタワー」の記者発表会の会場だった。記事でも触れたが、この物件の平均坪単価は295万円で、1期の最低単価は約280万円、最高単価は約300万円になる模様だ。その差は20万円だ。建物は38階建てで、1〜4階までは共用施設などとなり住戸部分は5階からだ。

 バブル期には、分譲住戸すべてを同じ広さで同じ価格にして分譲したデベロッパーもあるので一概には言えないが、マンションの単価設定は日照条件や眺望を重視して条件の悪い最下層の北側住戸をもっとも低くし、階数があがるごとに引き上げ、最上階の南向きを最高単価とするのが一般的だ。この手法をこのマンションに当てはめると1フロア当たりの単価差は【300(万円)−280(万円)=20(万円)】÷【38(階)−4(階)=34(階)】≒0.6(万円)となる。

 読者の中には何を言っているのか分からない方もいるかもしれないが、常識的には考えられない単価設定だ。超高層マンションといえば、最低と最高の坪単価は100万円どころか200万円の差がつくのが一般的だ。最近分譲された平均坪単価が275万円の三菱地所レジデンス・鹿島建設の49階建て「ザ・パークハウス晴海タワーズ」1期の最高単価と最低単価の差は198万円で、1フロア当たり4.2万円だ。他の超高層マンションを調べても似たような結果になるはずだ。

 このことだけでも、三井レジの単価設定が常識を覆すものであることが分かる。もう一つ、東急電鉄などが昨年から分譲している武蔵小杉駅直結の39階建て「エクラスタワー武蔵小杉」と比較してみよう。このマンションの平均坪単価は約290万円で、最低単価は260万円、最高単価は320万円だ。住戸部分の7〜39階の1フロアあたりの単価差は【320(万円)−260(万円)=60(万円)】÷【39(階)−7(階)=32(階)】≒1.9(万円)だ。

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 記者は、三井レジの説明を聞きながら、この単価設定は過去2回の同社のマンション販売状況の学習効果であり、最近の市況や需要者を的確に把握した上での決断だと感じた。念のために質問したら、担当者は「いろいろ考慮して単価差を圧縮した」と言葉少なに答えた。つまり、1億円を超えるような高額住戸の売れ行きが鈍い武蔵小杉の市況や停電時には陸の孤島≠ニなりかねない超高層の弱点・リスクを考慮したというわけだ。低層住戸の単価を下げなかったのは、隣接する南側の商業施設からは日照を阻害されないことも計算の上だろうと思った。

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 この単価設定が奏功するかどうかは結果を待たないと分からない。これほど万全の防災対策を施しているマンションなら、下層階と高層階とでは災害時にそれほどの被害の差が出ないだろうし、ならば眺望のよい高層階に人気が偏るかもしれない。記者の個人的な考えでは、入場券が3,000円の地上450メートルの「東京スカイツリー」第二展望台からと、1,420円の地上250メートルの「東京タワー」特別展望台からの眺望は値段ほどの差はないだろうから、三井レジの決断は吉と出ると思うがどうだろう。これが成功すれば、他社も追随することになりそうだ。

三井レジ 「武蔵小杉」駅直結3棟目 ホテルなら5つ星(4/27)

(牧田 司記者 2012年5月1日)