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日経新聞の「中古住宅販売に認定制」の真相


  日経新聞が2月27日付で報じた「中古住宅販売に認定制」という記事が話題になっている。記事は、中古住宅の流通を促進させる策として耐震性など新築住宅並みの厳しい認定基準を設け、優良物件だけを売る業者に国が「お墨付き」を与えるというもので、国交省としては11年度に10業者程度を認定し、中古住宅を改修する場合は、1戸当たり工事費の3分の1まで、最大で100万円の補助金を出すという内容だ。

 記事は、国交省が正式に発表したものではないので、業界紙などは「無視」しているが、「火のないところに煙は立たない」。気になったので国交省に聞いた。窓口と思われる同省総合政策局不動産業課長・海堀安喜氏は「私ども(不動産業課)のところは一切関与していない。窓口は住宅生産課なのでそちらに聞いていただきたい」ということだった。

 そこで、住宅局住宅生産課課長補佐・南津和広氏に聞いた。南津氏は、「あの記事は書き方に誤解がある。記事では、新しい基準を設けて認定し、補助金を出すと書かれているが、そうではなくて、考えているのは現在もある補助金制度(既存住宅流通・リフォーム推進事業)や既存住宅売買瑕疵保険制度などを活用して、流通会社が共同でインターネットサイトを立ち上げることができないかということだ。そのようなサイトに対して国交省が応援できないかと考えている。宅建業者ごとにお墨付きを与えようということではない。今後、公開して論議していただきたい」と語った。

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 つまり、海堀氏と南津氏の話を総合するとこうだ。個別の宅建業者を認定して「お墨付き」を与えるということではなく、一定の要件を満たした「優良物件」情報の提供に特化したサイトに対して、まとめて補助金を出せないかを住宅生産課が考えており、現段階では関係各部署で具体的に論議されていないことのようだ。 日経が具体的に「10社程度」と書いたのは、大手デベロッパー8社による新規分譲住宅サイト「メジャー7」が念頭にあったからではないだろうか。

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 記者は、中古流通のことはいま一つよく分からないが、国交省が考えているのはネットを活用して流通の促進を図ろうということのようだ。新築であろうと中古であろうと、消費者がネットを通じて情報を収集し、物件の選択に当たっては、いわゆる「掲示板サイト」などが利用されているようだ。「掲示板サイト」の最大手「マンションコミュニティ」には月間2,000万件のアクセスがあり、「掲示板」全体では3,000〜4,000万件にのぼるといわれる。

 「中古住宅の情報は各社の窓口に行かなくてもネットで収集できるし、現地の写真もGoogleマップを利用すれば簡単に手に入る。不動産会社を介さないで消費者同士が取引する動きがアメリカにはすでにある」という関係者の声もあるほどだ。

 いったい何が「優良」かという問題があるが、これまで「優良中古マンション融資」制度があったし、現在は「優良住宅取得支援制度」(フラット 35 S)がある。また、東京都には独自の「優良マンション登録」制度がある。一般社団リノベーション住宅推進協議会は「優良リノベーション住宅」制度を謳っていた(記者は、この「優良リノベーション住宅」制度は公取協の規約に抵触するのではないかという記事を書いたが、現在は「適合リノベーション住宅」に変更されている)。

 分かりやすく言えば、私的機関が「優良」という文言を使用するのは禁じられるが、国など公的機関が「優良」と認めたものは「優良」ということだ。現在、住宅生産課が考えている「優良」は現在ある制度を活用したもののようだから、それほどハードルは高くないと思う。

「優良リノベーション住宅」は不当表示に当らないか(2009/7/6)

(牧田 司 記者 2011年3月2日)