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「優良リノベーション住宅」は不当表示に当たらないか

 業界紙誌の報道によると、先週の木曜日、一般社団法人・リノベーション住宅推進協議会の発足式と懇親パーティが行われた。同協議会のホームページによると「リノベーションによる既存ストックの性能や価値の再生・向上によって、住宅を求める生活者が、自分の価値観に合わせて、無理なく、自由な住まい選びができる市場をつくる」のが目的という。加入会社は109社にのぼるという。リノベーション<}ンション業界トップのインテリックスが中心になって設立されたようだ。

 記者は結構なことだと思う。5年前、このリノベーション(中古マンション再生)について取材したときも、何らかの業界自主規準を設けて、ユーザーに理解される市場を形成して欲しいと思った。数社に「自主規制を設けたら」と呼びかけたが、どこも乗り気でなかった。みんなで仲良くやるよりも、他社より抜きん出ることに力を注いでいたようだ。

 今回の協議会の発足は、みんな足並みを揃えて差別化を図ろうということになったようだ。同協議会にもっとも期待するのは、建物の耐震性、遮音性など基本性能についても踏み込んで、消費者に理解を得られるような基準を設けて欲しいということだ。

 しかし、業界紙の記事や同協議会のホームページをみて疑問に思ったことがある。それは「優良リノベーション住宅」の認定制度だ。「優良リノベーション住宅」とは、給排水配管、給湯配管、排水管、ガス配管、電気配線などの点検・更新などを行い、同協議会の一定の基準を満たしているものを「優良」と認めるということらしい。

 問題なのは、果たしてそれらの設備機器を点検・更新したところで「優良」と呼べるのかということだ。建基法など法令上の問題をクリアするのは当然だし、設備機器を点検・更新したら「優良」というのであれば、新築マンションは全て「優良」ということになりはしないか。

 かつて同じような問題があった。「公庫融資つき」についてだった。「公庫融資つき」という文言を広告で謳うのは問題ないが、「公庫融資付きにつき優良」と謳うのは明らかに不当表示に当たった。

 つい先ごろ、あるデベロッパーが分譲しているリノベーションマンションを見学した。社宅をリノベートしたものだったが、素晴らしいマンションだった。公庫基準も満たしていた。しかし、このマンションを「優良リノベーション」マンションと広告で謳ったら間違いなく不当表示として問題になっただろう。

 同協議会には他の大手中古マンション再生会社が加入していないのも気になった。これは、協議会の名称に「リノベーション」という文言が用いられているからではないだろうか。リノベーション住宅≠ヘ、これまでインテリックスが自社ブランドとして用いてきたものだ。広範な再生会社が加入できるような名称でもよかったのではないか。

 記者は、発足したばかりの団体の足を引っ張りたくはないが、「優良リノベーション住宅」という認定制度は不動産業界が定めた広告自主規制団体「不動産公正取引協議会連合会」の規約「不動産の表示に関する公正競争規約」にも抵触するのではないかと思うがどうだろう。

 不当表示の禁止を定めた同規約23条には「取引態様について、事実に相違する表示又は実際のもの若しくは競争事業者に係るものよりも優良若しくは有利であると誤認されるおそれのある表示」とある。

(牧田 司 記者 7月6日)