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住友林業 「希望の松」の後継樹の育成に成功


「希望の松」の後継樹の苗

 住友林業と住友林業緑化は12月14日、東日本大震災の津波被害を受けながら1本だけ残った陸前高田市の通称「希望の松」の後継樹の育成に成功したと発表した。

 両社は、(社)日本造園建設業協会(日造協)岩手県支部から震災の津波被害を受けながら、唯一残った高田松原の “ 希望の松 ” の後継樹の育成および樹体の化学分析に関する依頼を受け、住友林業筑波研究所(所長:梅咲直照氏)で接ぎ木、挿し木、組織培養によるクローン増殖を、また血筋を残す目的で種子からの苗の育成に取り組んできた。その結果、挿し木、組織培養による後継樹の育成には成功しなかったが、接ぎ木により3本のクローン苗を、種子からは18本の苗を育成することに成功した。両社は今後、陸前高田市の復興の一助となるようこれらの苗を大切に育てていくとともに、これらの苗から更に多くの後継樹を育成していく。

 3月11日の東日本大震災では、市民に愛されてきた約7万本ともいわれる名勝松林「高田松原」も壊滅的な被害を受けたが、唯一この松だけが残り、被災した多くの人の希望の象徴として「希望の松」と呼ばれるようになった。しかし、長時間にわたり海水につかっていたことなどにより根が腐り、枯れることが確実となっている。 通称 “ アイグロ ” と呼ばれるアカマツとクロマツが交配して生まれた品種で、樹齢は200年以上ともいわれている。

 地元の日本造園建設業協会岩手県支部が中心となり造園会社など 57 名プロジェクトチームを組み、後継樹の育成や塩害などの調査を行なってきた。両社は、組織培養によるクローン樹の育成に数多く成功していることから、チーム参画して取り組んできた。

 会見に臨んだ住友林業筑波研究所主席研究員・中村健太郎氏は、「組織培養によるクローン樹を育成できなかったのは残念。挿し木や組織培養による針葉樹の育成は難しいといわれるが、これから研究を進め意地でも開発技術を編み出したい」と語った。

 日造協岩手県支部長・米内吉榮氏(米内造園社長)は、「後継樹の育成に成功したことを感謝するとともに、ほっとしている。復興計画がどうなるか分からない部分もあるが、市長には後継樹を使用してほしいとお願いしたし、市長もその意向のようだ」と述べた。

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 両社か記者発表会を開いた同じ時間帯に3つ4つの取材が重なったが、この取材を最優先した。「希望の松」の後継樹育成については、10月末の日本緑化センターが主催したセミナーで同社が後継樹の育成に成功したらしいということを聞いており、今回の記者発表も「成功」の発表がされると思い取材することにした。

 復興計画がどうなるかまだ分からず、実際に現地に植えるとしても数年先とのことだったが、今後、今回の震災で防潮林、防砂林としての松林がどのような役割を果たしたかの研究も含め、ぜひとも「希望の松」を復興のシンボルとして後世に伝えて欲しい。

 今春に取材した「祐天桜」も順調に育っていることを梅咲所長と中村研究員から聞いて嬉しくなった。


左から住林・梅咲直照所長、中村研究員、米谷社長

震災にも戦争にも耐えた佑天桜 住林が組織培養に成功(4/11) 

(牧田 司記者 2011年12月14日)