RBA HOME> RBAタイムズHOME >2011年 >

農水省・国交省 公共建築物の木造化で14日に会議

 農林水産省と国土交通省は12月14日、「公共建築物における木材の利用の促進に関する関係省庁等会議」を農水省内で開く。

 「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行され、国の責務として自ら率先して公共建築物における木材の利用に努めることが求められていることから、農林水産省及び国土交通省の政務から各省各庁へ木材利用の意義や状況などを説明し、各省各庁の公共建築物における木材利用の積極的な取組に向け、意見交換を行うのが目的。時間は約40分。

◇    ◆    ◇

 是非とも傍聴して取材したいし、耐火が義務付けられている延べ面積の基準や階数基準の見直し、混構造規定の見直しがどうなっているのかを知りたい。しかし、この日は同じ時刻に4つも取材が重なったので取材できない。

 ただ、わずか40分の会議でどのようなことが話せるのか、はなはだ疑問だ。傍聴席も10人ぐらいだという。つまり、取材できる記者も限られているということだ。

 この前も書いたが、このようなことで、木材の自給率を向こう10年の間に50%に引き上げられるのか。やる気があるのかといいたい。森は川につながり、海にもつながる。農業と水産業とも不可分の関係だ。森林の荒廃が進めば、全てがだめになる。隗より始めよ。

◇    ◆    ◇

 先日5日、国交大臣を務めた冬柴鉄三氏が亡くなられた。2008年8月、国交大臣を退任するとき、冬柴氏は「国交省の職員は国のシンクタンク」と、当時、バッシングを受けていた国交省の職員を擁護した。過去、国交大臣に就任して、希望の大臣でなかったことから「貧乏くじを引かされた」などと暴言≠はいた女性大臣もいたが、記者は冬柴氏のコメントを支持する。農水省、林野庁もそうだと思う。公共建築物の木造化で各省庁のイニシアティブをとり、政策の実現に邁進していただきたい。

先が思いやられる公共建築物の木造化 現状報告(12/8)

 以下、平成22年度「森林・林業白書」の公共建築物の木造化について書かれている部分を抜粋する。

◇    ◆    ◇

公共建築物の木造率は低位

 「公共建築物は展示効果やシンボル性が高いことから、公共建築物を木造で建築することは、人々に木材利用の重要性や木の良さに対する理解を深めてもらうのに効果的である。しかしながら、我が国の公共建築物における木造率は建築物全体と比べて低い。平成20(2008)年度に新築・増築・改築を行った建築物の床面積のうち木造のものの割合は、建築物全体では36%であるのに対して、公共建築物では7.5%にとどまっている。

 このように、公共建築物における木材利用が低位である理由としては、戦後、我が国では、火災に強いまちづくりに向けて、耐火性に優れた建築物への要請が強まるとともに、戦後復興期の大量伐採による森林資源の枯渇や国土の荒廃が懸念されたことから、国や地方公共団体が率先して、建築物の非木造化を進めてきたことが一因として挙げられる。

 また、昭和25(1950)年に公布された建築基準法では、高さ13m 又は軒高9m を超える建築物は、主要構造部を木造としてはならないとされるなど、木造建築物全般に対して、強い規制がかけられた。

 その後、木造建築物に関する技術開発の進展や海外からの市場開放・規制緩和の要求を受けて、木造建築物に対する規制は、昭和62(1987)年の建築基準法の改正以降、徐々に緩和されてきた。特に、平成12(2000)年の同法への『性能規定』の導入により、一定の性能を満たせば、多様な材料、設備、構造方法を採用できることとなり、木材・木造建築物の適用可能範囲が大幅に広がった。このような中、各地で大型ドーム等の大規模建築物が木造で建築されるようになってきたが、木造による公共建築物の割合は依然として低い状態にある。今後、1960年代以降に整備された公共建築物の多くが建替え期に入るとみられ、木造建築物による建替えの好機となり得ると考えられる」

 ◇    ◆    ◇

 「白書」は以上の分析を踏まえ、公共建築物の木造化を進めるための課題として、
(1) 低層の公共建築物の木造化、内装の木質化
(2)規模・構造の工夫等によるコストの削減
(3)公共建築物に対応した木材供給能力の向上
(4)発注者や設計者への普及啓発と技術者の育成
(5)研究成果を踏まえた木造建築物に関する基準の見直し
などを掲げており、「平成22(2010)年6月に閣議決定された『規制・制度改革に係る対処方針』では、建築基準法において耐火構造が義務付けられる延べ面積の基準や学校等の特殊建築物に関する階数基準等について、木材の耐火性等に関する研究の成果等を踏まえて、必要な見直しを行うこととされた。このため、国土交通省では、大規模木造建築物の火災時の安全性の検証等を実施している。また、同対処方針では、鉄筋コンクリート造と木造との混構造とする校舎等の構造計算に関する規定の見直しも行うこととされた」としている。

(牧田 司記者 2011年12月12日)