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多摩グリーンボランティア森木会

10周年&「緑の都市賞」内閣総理大臣賞 受賞記念講演会


「市民が育てる緑のまちづくり」公開座談会(左から川添氏、涌井氏、阿部氏、澤登氏)

「エゴからエコ 緑の価値を再認識しよう」涌井・東京都市大教授

 多摩グリーンボランティア森木会(多摩市・川添修会長)は11月20日、同会の10周年を記念するとともに、財団法人都市緑化機構主催による「第31回 緑の都市賞」内閣総理大臣賞を受賞したことを記念する講演会「市民が育てる緑のまちづくり」を恵泉女学園大学で行なった。東京都市大学環境情報学部教授・涌井史郎氏が記念講演を行なったほか、川添氏が司会役となり、涌井氏と恵泉女学園大学教授・澤登早苗氏、多摩市長・阿部裕行氏による公開座談会を行なった。関係者約100人が集まった。

 「緑の都市賞」は、樹木や花などの「みどり」を用いた環境の改善、景観の向上、緑のリサイクルなどに取り組み、緑あふれる施設づくり、街並みづくりに卓越した成果を上げている市民団体や企業、公共団体などを顕彰するもので、今年は52件の応募の中から同会が最高の栄誉である内閣総理大臣賞を受賞した。

 同会は、多摩市内の公共公園を主な活動のフィールドに定期的に草刈や伐採などの作業をしながら環境共生、生物多様性の取り組みを展開するとともに、「多摩市グリーンボランティア講座(初級講座・中級講座)」を実施して現状のみどりを維持する継承者を育てている組織。「多摩中央公園班」「一本杉公園みどりの会」など担当公園などに分かれた8つの班で構成されており、会員は300名近くにのぼっている。10年前、3人から始めた活動という。

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 涌井教授の話が聞きたかったからだが、多摩市民でもあり、今年が「国際森林年」の年でもあることから少しずつ「緑」について取材を始めたこともあり講演会に参加した。

 ここで、涌井教授の講演内容を一つひとつ紹介するわけにはいかないが、いくつか紹介しよう。

 涌井教授は、「緑を次世代に引き継ごうとされている活動に心から歓迎したい。私も緑の都市賞の審査委員だが、客観的かつ公正に判断して、皆さんの受賞を陰ながら応援していた。受賞は汗と知恵の結晶」と同会を称えた後、深刻なテーマに移った。

 「地球の歴史を暦に例えれば、農業革命は大晦日の11時59分であり、産業革命は年越しのわずか2秒前の出来事に過ぎない」現状において、2030〜2050年にはピークアウトするといわれる地下資源問題、1日に100種から場合によっては300〜500種の生物が絶滅する危機的状況にある生物多様性の問題など、「生物が絶滅の危機にある。生命圏の歯車が壊されつつある」厳しい現状を涌井教授は突きつける。

 しかし、その一方で、きちんと処方箋も示す。それが「環境革命」だという。「もはや豊かさを追い求める時代ではない。自然と対話しながらいかに自分らしく生きていくかだ」と涌井教授は説く。幸い、日本には欧州などとは異なった文明論を持ち、急峻な山が多く、世界的な豪雪地帯を持ちながら「厳しい自然を『いなす』技術をわれわれは持っているとし、具体的な事例として。地球を10周もする水郷や、五重塔の建築工法、『エグネ』『イグネ』なとの屋敷林、防災対策としての「祭り」などを例示し、「エゴからエコは世界的な方向。緑の価値を再認識してエコロジカルネットワークを構築しよう」と呼びかけた。

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 面白い話を紹介しよう。涌井教授が、美しいが同時に厳しい自然条件を併せ持つわが国で先人たちが「いなし」「負けるが勝ち」の技術を巧みに利用して生きてきたことを、自分の奥さんに例えて話した場面だ。「私はもう66歳。美しいが、性格が厳しいかみさんとどうして折り合いをつけるのかという難問の答えを知ったのは20年ぐらい前だ。『いなす』『負けるが勝ち』 これこそが夫婦円満の極意だ」と語った。会場は爆笑に包まれた。

 その通りだと思う。昔から怖いものは「地震・雷・火事・親父」と教わってきたが、われわれの世代は「親父」ではなく「かみさん」と十中八九の人は答えるのではないか。

 涌井教授は講演の後で「私の授業には300人ぐらい集まるが、居眠りする学生はいない。眠らさないよう話すことも必要」と語った。

 とにかく話が面白い。言葉の魔術師だ。涌井教授は、殻の汚れを防ぐ機能を持っている、トイレや浴槽の開発にも参考になった「カタツムリ」の話もしたが、記者は、次々と言葉を紡ぎだす涌井教授に「カタツムギ(語りつむぎ)」の称号・あだ名を進呈したい。

 涌井教授は、12月3日に行なわれる同大学の公開市民講座で「環境革命の時代」と題する講演を行なう。興味のある方にはお薦めだ。

「緑の価値 復権を」東京都市大・涌井教授 緑化センター(10/18)

(牧田 司記者 2011年11月29日)