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やりがいのある宿題と感動的な報告

第3回「多摩NT大規模団地問題検討委員会」

 東京都は10月24日、第3回「多摩ニュータウン大規模団地問題検討委員会」を開き、上野淳委員長(首都大学東京副学長)が、これまでの会合を踏まえて整理した「委員会の論点整理について」を報告したほか、日本女子大学家政学部居住学科・定行まり子教授が「若年世代の呼び込みについて」を、白岩光委員(都市再生機構東日本都市再生本部)が「都市再生機構の子育て支援の取り組み」を、香山幹幹事(東京都都市整備局住宅政策推進部)が「都における若年世代支援の取り組み」をそれぞれ報告した。

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 委員会は3回目を迎え、いよいよ佳境に入ってきた。各委員に課せられたやりがいのある宿題と、各委員を感動させた報告があった。

 宿題は、上野委員長が示した「委員会の論点整理について」だ。この報告書は、A3判2ページにまとめられたもので、縦軸に「都市基盤整備・まちづくり」「住宅更新・ストック活用」「日常生活を支えるサービス機能」「コミュニティ」の4つの大きなテーマが掲げられ、横軸には「高齢者・障害者への対応」「若年世代の呼び込み」「安心安全対策」「環境・省エネルギー対策」「まちづくりのルールづくり」という5つの課題が示され、それぞれについて今回の会合で話されたものや、今後の方向を示すものなどに仔細に整理されている。それぞれが重層的に重なり合い、相互関連が一目瞭然で分かるものだ。

 一つ一つは紹介できないが、相当踏み込んだ課題が掲げられている。例えば「『農」のある暮らしの実現」には、遊休農地を借り上げ、住民で活用する仕組み、農業体験イベントや農作業講習の実施、地元農産品を消費する地産地消の推進、遊休地を活用した植物工場などの誘致、農地や里山などの保全活動への住民参加などが盛り込まれている。さらには「若年世代居住を促進するための学生居住者への地元自治体による賃料補助」などもある。

 上野委員長は、「皆さんにこれから突っ込んだ論議を多角的にしていただくため作成した。2〜3週間かけて宿題に取り組んでいただき、書き足りないものを盛り込んでほしい」と語った。

 数えてはいないが、委員が取り組まなければならない課題・テーマは数百項目はあり、大変な労力と時間をかけないと完成図は描けないものだ。上野先生は優しい先生だと思っていたが、思い違いをしていたようだ。縦糸と横糸を1本1本紡いでいく作業に近いのではないか。炭谷委員は「受け止めるのに精一杯」と責任の重さを感じていた。

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 「各委員を感動させた」報告とは、定行教授の報告だ。もちろん記者も感動したのだが(というより記者席と各委員の席はかなり離れており、さらに記者の目が悪くなり、耳が遠くなったのか、マイクがよく聞こえず、プロジェクターもよく見えず、報告の半分は聞き取れなかったのだが)、浅学非才の記者が「感動した」といっているのではない。

 「極めて意義深い」(上野委員長)「感銘を受けた。目がうろこ」(白岩委員)「他の地域との連携、広いエリアとしての多摩ニュータウンの価値を考えさせてくれた」(炭谷委員)「八王子にも500人の待機児童がいる。参考にさせていただきたい」(岡部委員)「地に足がついたプレゼン」(西浦委員)など、各委員から大喝采を浴びたのだ。

 上野委員長の宿題と同様、一つひとつ定行教授の話を紹介できないが、教授は「多摩ニュータウンの未来は子どもが拓く」とし、「今、諏訪・永山団地は少子高齢化が進行し、小中学校が統廃合、4校が他施設に転用、幼稚園も2園が閉園された。しかし、待機児童は多摩市に200人以上いるし、緑が豊富な市内では質の高い屋外環境があり、市外からの通園も増えている。子どもは地域の活性化に大きな役割を果している。諏訪・永山は子どものオアシス。30年ぶりに保育所などを訪ねたが、30年前と同じで素晴らしく感動した。経営努力もしている」と締めくくった。

 定行教授は30年前、博士論文を認めるため、諏訪・永山をくまなく歩いたという。そして、そのときの子どもたちが思春期を迎えたときと共働き世代になったときも訪れ、そして今回訪れたという。自らも唐木田に住んでいたことがあり、「子どもから、再びここに帰って来たいから家を売らないでといわれている。今は両親に住んでもらっている」と話した。

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 こんな素晴らしい会合が取材できるのに、メディアの取材はほとんどなし。これは告知をしっかりしない都の責任もあるだろうしメディアの責任もある。マクロデータだけを頼りにオールドタウン≠ネどと上っ面の事象を面白おかしく取り上げるからどこからも信頼されなくなるのだ。

 天に唾するようなものだし軽佻浮薄を地でいく記者だが、「地に足をつける記事」を書き続けることを肝に銘じたい。

第2回「多摩NT問題検討委員会」ガイドライン作成へ(8/30)

(牧田 司 記者 2011年10月24日)