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 「里山の再生・利用を」 多摩NT学会で久保田繁男氏が講演


「多摩ニュータウン学会第7回例会」(明星大学で)


久保田氏

 多摩ニュータウン学会は10月1日第7回例会を明星大学で行い、西多摩自然フォーラムの代表として、またNPO森づくりフォーラムの理事として幅広い活動を行なっている久保田繁男氏が「資源利用を伴わない里山管理への疑問と資源利用を阻害する行政の仕組み」について講演した。

 久保田氏は、「里山については生物多様性の観点と資源利用の観点からという2通りのアプローチがあるが、今回は資源利用の観点を中心に論じたい」と前置きし、高度成長期のエネルギー革命をきっかけに薪炭から電気や石油などに主役交代し、里山管理が崩壊したこと、その後、輸入材の利用などで里山の荒廃が加速し、里山林(公有林)の資源利用を阻む行政の姿勢が里山再生を妨げていることなどを話した。

 また、久保田氏は指定管理者制度の活用やボランティア活動、大学の学生や研究者などの連携などを通じて「人と自然の関係を再構築しなければならない」などと語った。

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 久保田氏は現在66歳。里山再生の活動を始めてから約20年という。表記の里山行政に「風穴を開ける」ため、居住地の東京都青梅市を中心に積極的な活動を行なっている。里山について多少の知識がある記者も、その精力的な活動に頭が下がる思いだ。

 講演で強く印象に残ったことを記す。第一は、秋の七草が絶滅の危機にあるということだ。秋の七草といわれても名前すら出てこないが、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウは絶滅危惧種だという。春先に芽を出す春の七草はまだ大丈夫だが、里山の木が伐採されなくなり地面に光が届かなくなったために、秋に育つこれらの草花が育たなくなったのだという。皆伐されなくなったことで、虫が育つ草原がなくなっているのも深刻な問題だという。

 二つ目は、「東京都は緑の量の確保しか考えていない」という里山に対する行政だ。公有林から採れる米、山菜などは「副産物」で、原則として持ち出すことも販売することも禁止されているという。「緑地を残す考えから緑地を生かす考えに変え、システムを構築することが必要」と語った。

 三つ目は、ボランティアに対する考え方だ。大久保氏は、「ボランティアという言葉は奉仕=無償活動というイメージが強い。有償のボランティアもあっていいし、何よりボランティアに携わっている人は好き≠ェ基本にある」と語った。行政はもこうしたボランティアをもっと活用・サポートすべきだろう。

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 久保田氏の話で、記者も思い当たるふしがある。わが団地の近くにある雑木林の公園の草刈だ。この雑木林には絶滅危惧種といわれるキンラン、ギンランが咲く。記者は、庭に移植したい気持ちを抑えて眺めることだけにしている。ある日、ボランティアか市が委託した業者なのか知らないが、その雑木林の下草を機械で刈り取っている人たちがいた。

 キンラン、ギンランも春に咲くから、久保田氏の言うように毎年咲くのかもしれないが、雑木林の高木だけを残し、下草を全て刈り取ってしまうことも生物多様性には問題があると久保田氏は指摘した。

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 手に取れば袖さへにほふ、をみなへし、この白露に散らまく惜しも 古今和歌集(韓国人作家の李寧煕氏によれば全く別の意味に解釈されるのだろうが、ここは言葉どおりに受け取りたい)

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(牧田 司 記者 2011年10月4日)