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三菱地所レジデンス マンションのコミュニティ支援に力注ぐ

 マンションは管理を買え≠ニは言い古された言葉だが、どちらかといえばマンションデベロッパーはその逆で、事業離れ≠ニいう言葉もあるように、早く売り切って収束しようと考えてきた。記者も、完売してからそのマンションの管理がどのようになっているのか関心を抱くことはなかった。しかし、記者自身も長くマンション住まいを経験して、心底からマンションは管理を買え≠ニ思うようになってきた。

 区分所有法や管理規約は、マンションの価値を維持・向上させるために日常の管理や長期修繕のためについてはこと細かに規定している。これはこれで大事なのだが、実際の組合運営となると、組合員同士のコミュニティ形成が極めて重要な働きをする。マンションにつきものの騒音などのクレームはほとんどが人間関係、コミュニティの欠如からくるといって過言でない。

 管理会社に委託する業務を「ハード」とするならば、コミュニティ形成は「ソフト」で、いわば車の両輪のようなものだ。双方が機能して初めてマンションの価値を高めるのだが、区分所有法も管理規約もコミュニティについてはほとんど言及していない。区分所有法や管理規約の不備を補うために、管理組合によっては、独自の自治会組織をつくって、コミュニティ活動を行っているところもあるのは当然だろう。

 このような背景があってかどうかは分からないが、ここ数年、マンションデベロッパーや管理会社もコミュニティ支援に本腰を入れて取り組むようになってきた。東日本大震災を経験して、入居者同士、あるいは地域との連携が大切という認識も広まってきた。いくつかデベロッパーの取り組みを紹介する。

 まず三菱地所レジデンス。同社は先に行った大規模マンション「ザ・パークハウス追浜」の記者発表会で、コミュニティ支援のために管理組合の下部組織としてコミュニティ活動を行う全員加入の組織をつくり、専門のスタッフが支援していくと発表した。管理費とは別の会費として月額500円を徴収し、様々なイベントの費用に当てたり、専門スタッフを雇い入れる費用にするという。

 先に竣工した「MINASIA 湘南ライフタウン」(全339戸)や「MID OASIS TOWERS」(全705戸)ではそれぞれ「まちびらき」イベントを行い、入居者同士が交流できる場を設けた。双方で700名以上が参加したという。

 同社が本格的にコミュニティ支援活動を開始したのは2006年入居開始の「フォートンヒルズ」(全888戸)で、以来、首都圏と関西圏の大規模マンションを中心に10カ所で同じような取り組みを行っている。

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 記者が注目したのは管理組合とは別の組織をつくり、会費も徴収することだった。同社のこれらのマンションの原始規約にはきちんと明記されているはすだが、ほとんどの管理規約にはこのようなコミュニティ形成に関する条項はないだろうし、会費を徴収することなども盛り込まれていないはずだ。入居後ではこのような組織はまず作れないだろう。

 入居時にしっかりしたルールを決め、活動の原資となるお金もプールし、専門スタッフが旗振りをしないとまず成功しないと考えていただけに、さすがというべきか。月額500円なら異論も出ないだろう。

 ただ、コミュニティ組織を組合の下部組織として位置づけることには、疑問もわく。双方が対立することのないようにという配慮なのは分からないではないが、双方が役割を分担し、それぞれがマンションの価値向上のために補完しあう関係を築くことが必要だし、そのためには上部も下部もないような気がする。コミュニティ組織に自治組織としてのある程度の権限を与えたほうが全体として活動は活発化するのではないだろうか。

全709戸の三菱地所レジ「ザ・パークハウス追浜」分譲(7/28)

(牧田 司 記者 2011年8月10日)