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 「横浜ポートサイド」の再現なるか

横浜市住宅供給公社「マークワンタワー長津田」


「マークワンタワー長津田」完成予想図

 横浜市住宅供給公社が8月中旬に分譲する「マークワンタワー長津田」を見学した。4年前に分譲し、圧倒的な人気を呼んだ「横浜ポートサイド」の再現がなるかどうかに注目が集まっている物件だ。

 物件は、東急田園都市線長津田駅から徒歩1分、横浜市緑区長津田二丁目に位置する28階建て全209戸の規模。専有面積は45.17〜105.42u、価格は未定だが、70u台で4,700万円台からの予定。竣工予定は平成25年3月下旬。設計は梓設計・鹿島建設株。監理は梓設計。施工は鹿島・相鉄・土志田建設工事共同企業体。販売代理は野村不動産アーバンネット。マンションのほかに3階建ての商業棟と3階建て公共棟が併設される。

 昭和56年の地元の組織「長津田駅北側再開発研究会」が発足、その後、平成14年に策定された緑区の「都市計画マスタープラン・緑区プラン」の方針に基づいて公共・公益施設の整備とともに地域拠点として位置づけられている再開発プロジェクトだ。敷地面積は約10,000u。

 駅前には駅前広場が整備され、バスターミナルやタクシー乗り場が設置されるほか、公益施設にはコンサート、イベント会場となるホールや展示ギャラリー、楽器練習室、会議室などが設置される。商業施設には大型スーパーが入居する予定だ。

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 周知のように、全国の住宅供給公社はバブル崩壊によってほとんどが分譲事業から撤退し、中には経営破たん、解散してしまった公社も少なくない。そうした中、横浜市住宅供給公社と川崎市住宅供給公社だけは分譲事業を継続して行っている。別掲のように、横浜公社は4年前、「横浜ポートサイド」を分譲し、圧倒的な人気を集めた。都市再生機構を含め公的住宅としては最初で最後≠ニなる億ションも供給して話題となった。川崎市公社も昨年末、「川崎ゲートタワー」を分譲して人気となった。

 腐っても鯛≠ニ言っては失礼だが、この横浜市と川崎市公社のマンションが売れたのは、立地条件や割安の価格もあるが、やはり「公社」に対するユーザーの信頼感が大きな要因の一つだ。そして、両公社に共通するのは、従来から民間の知恵を取り入れてきたことが現在もなお継続して分譲事業を行える大きな理由の一つだと思う。

 公社住宅として始めて横浜市が「横浜ポートサイド」で億ションを供給したことにそのことが端的に現れている。公社内には億ションを供給することに抵抗を感じた幹部も少なくなかったはずだが、販売を担当した野村アーバンサイドが強く提案したのが受け入れられたのだろうと記者は考えている。

 公団であろうと公社であろうと、市場では民間と競争しなければ勝てないし、競争しないのであればやはり分譲から撤退したほうがいい。価格に見合う商品力がなければ商品が売れないのはどのような商品でも同じだ。記者は、以前の都市公団に「民間並の設備仕様にし、結果として億ションになってもユーザーからの支持は得られるはず」と主張し続けてきたが、受け入れられることはなかった。

 「川崎ゲートタワー」でも、民間顔負け≠ニ思えるほど様々な提案がなされていた。これも販売を担当した三井不動産レジデンシャルの提案が採用されたためと理解した。

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 さて、今回の「長津田」はどうか。「横浜ポートサイド」と同様、野村アーバンが販売を担当することになったが、やはり前回の「横浜」の実績が評価されたのだろう。3つあるモデルルームのうち100uのモデルルームは民間の最高級クラスのモデルルームとほとんど遜色ない。随所に天然石を採用し、突き板仕様のフローリング、面材、人造大理石の浴槽、プッシュプルドアなどを採用している。

 さすが公社という仕様も見られた。他の2つのモデルルームは設備仕様などは並≠ニいえるかもしれないが、トイレのドアの幅は約75センチ確保し、トイレ内も民間のトイレより広い。車椅子でも利用できるようにという配慮だ。

 民間マンションでもユニバーサルデザインは当たり前になっているが、このトイレドアの幅だけはどこも広くしようとしない。ほとんどか65センチぐらいだ。玄関にも手すりが設置されていた。こうした民間ができない、やらないことをやるからユーザーにも支持されるのだ。

 横浜市の超高層としては初の「長期優良住宅」認定を受け、SIも採用しているように、建物の基本性能も優れている。鹿島の制震工法を採用し、「スーパー RC フレーム構法」により 居室内に柱・梁型を少なくしているし、リビング、居室に一部折上げ天井も採用している。ワイドスパンのプランもいい。

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 問題はやはり価格だ。記者は販売担当者から予定単価を聞いているが、「まだ公表しないで」という約束をしたので公表できない。決して安くはなく、野村不動産が分譲する「プラウド相模大野」の大型マンションとそれほど変わりないということにとどめたい。担当者は「ここは田園都市線の横浜市の物件ですから」と自信ありげに話した。モデルルームをオープンして5週間で約700件の来場者があるという。

 記者は、「横浜ポートサイド」のような人気にはならないと読んだが、40〜60u台の住戸には申し込みが殺到するはずだ。100u台は6戸あるが、高くても9,000万円台で、億ションにはならないはずだ。

 その後、最終的な単価は227万円となった。1期180戸の抽選は9月18日。即日完売となりそうだ。

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(牧田 司 記者 2011年7月22日)