RBA HOME> RBAタイムズHOME >2007年 >

横浜公社が全国初の億ション その英断に拍手喝采

「横浜ポートサイドプレイス タワーレジデンス」 完成予想図

 

野村不動産アーバンネットが企画提案

 野村不動産アーバンネットが企画提案した横浜市住宅供給公社の「横浜ポートサイドプレイス タワーレジデンス」が今週末からの分譲を前に圧倒的な人気を呼んでいる。8月中旬から現在まで、問い合わせは 5000件を突破し、モデルルーム来場者も3000組を超えている。全179戸が一挙に分譲されける模様だ。

 JR横浜駅から徒歩8分、横浜市神奈川区大野町で建設中の29階/地下1階建ての全179戸の規模。専有面積は約49〜116平方b、価格は2,710万円〜12,800万円 (最多価格帯4,000万円台)、坪単価250万円。マンションのほか店舗・事務所・保育所が併設される。施工は鹿島建設。竣工予定は平成21年11月下旬。
  人気の最大の要因は、その立地条件だ。現地の用途地域は工業地域だが、約25ヘクタールの周辺エリア全体は住宅市街地総合整備事業として住宅中心の街づくりが行われている。目の前に帷子川が流れ、横浜そごうへも徒歩数分の近さだ。3年前に分譲され、圧倒的な人気になった「ナビューレ横浜」や「パークタワー横浜ポートサイド」にも近接。業界関係者なら坪300万円の値をつけても不思議でない立地条件にある。

 最高の立地条件にあるうえ、このところ同エリアにもみなとみらい21地区にも新規マンション供給がなく、需給関係が好転していることが指摘できる。旧価格で分譲されたマンションが分譲時価格より1000万円、2000万円高で取引されているほどだ。

 このほか、鹿島の施工、事業主が公社という安心感などもあるようだ。

高額住戸は民間と遜色ない設備仕様

 記者は、現地を見学して人気になるのは当然だと思った。設備仕様は「ナビューレ横浜」などよりは劣るが、いかにも公社住宅らしい手すり付き、広いトイレなどは好感できるし、高額住戸は民間のそれとほとんど同じ仕様だった。

 そして何より、拍手喝采したいのは、億ション供給へのためらい≠打ち破ったことだ。記者は、110平方b前後の最高層住居の4戸が1億1800万〜1億2900万円の値がついているのを見て驚くとともに、感慨深いものを覚えた。

 バブルの頃、記者は都市機構(当時、都市整備公団)の理事などに「億ションの壁を越えるべき。価値のあるものはそれなりの価格をつけないと、かえって不公平」「高額住戸の設備仕様レベルを上げるべき」と迫ったことがある。今でもそうだが、当時公的機関は億ションを分譲しない≠ニいう不文律が存在した。その結果、同じ面積の中層階と最上階で価格がほとんど同じという信じられない値付けが行われていた。

 今回、全住戸のわずか2%ではあるが、億ションが分譲されるというのは、全国の公的機関の分譲住宅で初めてのことだろう。その是非をめぐって喧喧諤諤の論議があったのは容易に想像がつく。

 しかし、住宅供給公社が億ションを供給してはいけないという法律はどこにもない。あるのは「勤労者が健康で文化的な生活を営むに足りる良好な環境の住宅又は宅地が確保されるように努め、住宅又は宅地の賃貸その他の管理及び譲渡に関する業務を行なうには、住宅を必要とする勤労者の適正な利用が確保され、かつ、賃貸料又は譲渡価格が適正なものとなるように努めなければならない」(地方住宅供給公社法第22条)という条文くらいだ。

 時代は変わった。同法が制定されたのは昭和40年だ。住宅価格は今より1桁どころか、2桁近く違っていたはずだ。

 億ションを買える「勤労者」とはどういった層かという論議はありそうだが、記者は、「富裕層」が住むような街にしないと、これからの都市間競争には勝てないと思っているので、横浜市の決断は結構なことだと思う。


モデルルーム

 

(牧田 司記者 11月2日)

ページトップへ戻る