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東京のど真ん中の再開発マンション

安田不動産・東急不動産・東京建物「ワテラス」


「ワテラス」完成予想図

 安田不動産(事業比率60%)・東急不動産(同20%)・東京建物(同20%)の3社共同マンション「ワテラス タワーレジデンス」を見学した。再開発計画が持ち上がってから約20年、千代田区最高峰の超高層タワーマンションがいよいよ分譲開始される。

 物件は、東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅から徒歩3分、またはJR御茶ノ水駅から徒歩4分、千代田区神田淡路町二丁目に位置する再開発事業プロジェクトで、全体の敷地面積は約2.2ヘクタール。住宅が建設される41階建てタワー棟には、約10,400坪のオフィス・商業施設が併設されるほか、別棟の飲食店舗やスーパーマーケット、学生用賃貸住宅などからなる15階建てアネックス棟、さらに保育所、福祉施設が入居する8階建て南棟が建設される。

 住宅部分は、20階から41階の部分で全333戸(分譲住戸253戸・地権者住戸80戸)の規模。専有面積は45.14〜146.93u、価格は未定。竣工予定は平成25年3月初旬。施工は大成建設。設計・監理は佐藤総合計画。販売は7月で、販売代理は東京建物不動産販売、東急リバブル、三井不動産レジデンシャル。

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 物件の最大の特徴は、その立地条件だ。従前は淡路小学校や雑居ビル、商店、工場、民家などが建ち並んでいた。最寄り駅は御茶ノ水駅や小川町駅で、秋葉原、神保町にも近く、歩こうと思えば神田、日本橋、大手町、皇居などもほぼ20分圏の近さだ。つまり、東京のど真ん中の立地だということだ。しかし、従前の用途でも分かるように、「神田淡路町」に足を踏み入れた人はほとんどいないのではないか。それほどマイナー≠ネエリアでもある。分譲マンション事例も最近はないはずだ。

 今回、再開発される経緯も、従前の淡路小学校が都心部の人口減少に伴い統廃合され、学校が廃校となることでコミュニティが崩壊することに地権者などが危機感を持ったからだ。幸い、計画地の土地の3分の1が千代田区が所有し、3分の1を安田不動産が所有していたことで、計画はまとまった。それでもこれまでに20年が経過している。

 「ワテラス」の分譲開始で思い出すのは平成15年に竣工した三井不動産レジデンシャルの 29 階建て「東京パークタワー」(302戸)だ。今回の「淡路町」と同様、神田神保町の古本屋街を再生・活性化するためマンションとオフィス棟が建設された。全体面積も2.5ヘクタールだから、「ワテラス」とよく似ている。確か、分譲坪単価は420〜430万円だったような気がする。

 当時、周辺には分譲マンションの事例などはほとんどなく、同社は都心に立地しながら通勤にも様々な生活利便施設にも近いということをアピールするために、バスツアーも企画したような気がする。企画はヒットし、かなり広域から集客もでき早期完売を果たした。

 今回も、「神保町」よりマイナーな「淡路町」の利便性をどれだけ訴えられるかがカギを握りそうだ。利便性から言えば、最寄り駅は「御茶ノ水」だし、御茶ノ水駅前の旧日立製作所ビルの再開発プロジェクト「駿河台4−6計画」が大成建設や安田不動産などが出資するSPCにより進められている。両プロジェクトはペデストリアン・デッキで結ばれ、新御茶ノ水駅ともつなげることになっている。

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 問題は価格だ。同社は「未定」としているが、比較になりそうなのは、リーマンショックの直前に即日完売した野村不動産「プラウド千代田富士見」だ。飯田橋駅前の38階建て全414戸(分譲は306戸)で、坪単価は470万円だった。三井不動産レジデンシャルも飯田橋駅前で再開発マンションを分譲するが、こちらの竣工は「淡路町」より先だ。

 時期が時期だけに坪470万円にはならないだろうが、「飯田橋」と「御茶ノ水」の比較からすればおのずと結果は出る。野村不動産の「千代田富士見」が全国区人気になったように、「ワテラス」も全国区人気になってもおかしくない。

 モデルルームは、143uの「ザ・ペニンシュラ東京」の内装を手がけた橋本夕紀夫氏によるコンセプトルームと、89uの「リプラスタイル」によるものの2タイプだ。双方ともかなり印象的なデザインだが、橋本氏のデザインは、自然石や天然木、西陣織をふんだんに用いたもので、天井高は3メートル。足元から天井までLow−E複層ガラスウォールが採用されている。基本性能面では制震構造となっており、東京都の旧マンション環境性能表示制度で星11個(満点は星12個)を獲得している。

 建物外観はガラスカーテンウォールが採用されているが、冷たさを和らげるやわらかな曲線もデザインに取り込んでいるのが特徴だ。敷地南側に配する公園は半ば完成しており、ケヤキやクスノキの大木が植わっている。

    
タワー棟

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 住宅とは直接関係ないが、アネックス棟の上層階2フロアに設置される学生用賃貸住宅は、同社開発第三部第一課課長代理・岡本洋貴氏によると「面積は27〜30u台のワンルームですが、地域のイベントや祭りなどにボランティアとして参加することを条件に賃料を安価に設定する」ということのようで、この企画が面白い。

 賃貸の相場は分からないが、ひょっとすると坪当たり賃料は1万円ぐらいになるのではないか。また、岡本氏は「タウンマネジメント機関(TMO)を立ち上げ、地域のコミュニティ形成に貢献していく」と話した。

 同社は、会社の社員規模こそ130余名だが、何しろ創業者は安田善次郎だ。本社屋も神田錦町に構えており、地元企業として相当力が入っているプロジェクトだ。これほど大規模なマンションプロジェクトで同社がトップ・シェアを占めるのは初めて。


アトリウム

反響1万件!野村不動産「プラウドタワー千代田富士見」(2007/5/17) 

(牧田 司 記者 2011年6月27日)