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「記事は足で書け」「百聞は一見にしかず」

業界紙に苦言を呈したい


  今は1人だが、記者はかつて業界紙にいた。身内の批判はしたくないのだが、今回の巨大地震に対する住宅・不動産業紙の報道のあり方には苦言を呈さざるを得ない。「みんな、何をしているのだ」といいたい。

 地震が起きてから2週間が経過した3月第5週目の業界紙を読んだ。当然1面から震災のことに触れていたが、「住宅新報」も「週刊住宅」も写真は通信社からの借りものだった。どうして自前の写真を掲載しないのか。写真も記事のうちだ。この先、10年、20年、あるいはもっと先、今回の地震について記事を書くときが必ずある。そのときもまた借りものの写真で済ますのだろうか。果たして借りものの写真で読者の心に響く記事が書けるのだろうか。

 記者が若いとき、いつも上司(編集長)と衝突したのは、記事に添える写真のことだった。その上司は、マンションや戸建て、街並みのなどの写真を記事に添える時、いつも同じ写真を使用していた。記者は、それに我慢がならなかった。使い古された、手垢にまみれた写真を何度も使うことは、その文章がいかにいい加減で、読者にも失礼なことだと思ったからだ。

 今回の業界紙を見ていて、やはり同じことを思った。写真を載せればいいというものではないはずだ。記事についても同様だ。両紙とも全宅連系の不動産会社とは取材チャンネルがあるはずだ。東北エリアからの情報が少ないのはどういうわけか。あらゆる情報網を駆使して、チームワークを生かして生の情報を伝えてほしい。

 東北が無理なら、首都圏の新浦安、千葉市美浜区もあるではないか。ここも甚大な被害を受けた。あるいはまた、計画停電で超高層タワーマンションの居住者はどのような生活を強いられたのかを書けば、それはそれで素晴らしいレポートが書けるはずだ。マンションの販売現場や仲介現場の生の声を拾えば、これもまたいい記事にまとまるはずだ。

 「記事は足で書け」「百聞は一見にしかず」―先人が教えてくれるではないか。まだ遅くない。現地に飛んで、現地から、業界紙の記者らしい住まいに関する情報を伝えて欲しい。

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 かく言う記者も現地には足を運んでいない。RBA野球の関係から中国にはいろいろお世話になったので、岩手県大船渡市で支援活動を行っていた中国の支援隊を取材しようと思い会社から了解も得た。通訳も確保した。残念ながら、取材に出かける前に中国隊は帰国していた。

 しかし、それでも新浦安と千葉県美浜区の惨状を少しは伝えられたと思う。あれほどインフラがズタズタになりながら、マンションや戸建てが1物件も倒壊せず、人的被害がなかったのに安堵するとともに、わが国の建築技術の高さを再確認することができた。大きな収穫があった。

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 震災後、全ての取材がキャンセルとなり、1物件のマンション取材も行っていないが、震災後から3月28日までに42本の記事を書いた。昨年の同時期は26本だった。増えた本数のうち大半は各企業の「義援金」の記事だ。各社のホームページのコピー&ペーストという情けない作業ではあるが、各社が公表している義援金額はほとんど網羅していると思っている。書くことで各社が義援金・支援競争を行ってくれれば、それだけ被災地支援に記者も役立つと思っている。

がんばれ業界紙誌 現地からの報道を期待(3/15)

(牧田 司 記者 2011年3月29日)