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帝国データ 公社住宅の実態調査について考える

 帝国データバンクが、全国の住宅供給公社51社に関する興味深い実態調査をまとめ公表した。

 レポートによると、51社の総資産合計は約2兆7874億円で、トップは東京都の約1兆3513億円。上位10公社のうち神戸市、北海道、千葉県の3公社は債務超過となっている。無借金は12社で、堺市が債務超過となっているほか、山形県、滋賀県、香川県が廃止の方向となっている。自己資本額合計は約5177億円で、債務超過に陥っているのは10社あり、債務超過額トップの茨城県は、今年9月28日に水戸地裁へ自己破産を申請している。また、千葉県と北海道は特定調停を申し立てており、山口県も廃止の方向であるとしている。

 帝国データバンクは、「良質な住宅を供給してきた実績は評価すべきだが、多くの民間不動産会社があり、住宅着工件数が頭打ちの現状では、その社会的使命はすでに終えたと指摘する向きも多い」とし、「2003年3月期からは地方住宅供給公社にも時価評価が導入されることで、実態が表面化した」「2003年6月の地方住宅供給公社法改正で自治体が独自に解散できるようになり、2010年3月末までに6社が解散し、廃止の方向となっている公社も出ている」「さらに、2008年度決算から自治体財政健全化法が適用され、赤字地方債の『第3セクター等改革推進債』(3セク債)が5年間に限って発行が認められることとなったため、茨城県に続いて3セク債の活用により破綻処理を進める住宅供給公社の出現も予想される」としている。

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 このような住宅公社に関する実態調査が公にされるのは初めてだが、記者もバブル崩壊後に試みたことがある。しかし、情報公開の壁に阻まれできなかった。今回のレポートは、予想通りとはいえ深刻な実態が浮き彫りになった。

 例えば東京都住宅供給公社。総資産はデベロッパーで言えば野村不動産ホールディングスとほぼ同額だ。都民1人当たり約10万円の計算になる。しかし、有利子負債は約8,225億円に達しており、自己資本は約3,386億円で、自己資本比率は25.1%だ。つまり、都民1人当たり返さないと利子がつく6万円強の借金を抱えているということになる。

 自己資本比率の低さがそのまま経営を圧迫すると断定はできないし、開発事業からは撤退しているので経営は安定しているのだろうが、厳しい状況にあるのは間違いない。同公社に出資している東京都も同様だ。

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 記者はバブルが崩壊する前までは、首都圏のほとんどの公社を取材していた。立派な住宅地を開発していたところもあった。平成元年年に東京都住宅公社が分譲した6000〜7000万円台の戸建て「多摩ニュータウン南大沢四季の丘」 1 次(45戸)の競争倍率は確か3000〜4000倍の競争倍率になった。寒い雪が降った日だった。南大沢駅から現地まで15分ぐらいの道のりは人でつながった。この競争倍率は今でも官民の分譲住宅の競争倍率記録になっているはずだ。それほど当時は「公社」のブランドは威力があった。

 バブルが崩壊し様相が一変したが、バブルを処理するプロはいなかったように思う。管理職はほとんど2〜3年務めると交代していた。

 あれから20年。事態は何ら改善されていないことを今回のレポートは証明した。記者は、同じような深刻な事態にある土地区画整理事業にも焦点を当てるべきだと思っている。

茨城県住宅公社が全国初の破産手続 負債523億円(9/28)

(牧田 司 記者 2010年10月13日)