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結局は何もまとまらない? 民間賃貸住宅部会

 賃貸住宅を巡る紛争の未然防止、滞納・明け渡しを巡るトラブルの解消、賃貸ストックの質の向上を目指す社会資本整備審議会住宅宅地分科会の「民間賃貸住宅部会」(浅見泰司部会長・東大空間情報科学研究センター教授)の9回目の会合が11月10日、国交省内で開かれた。

 今回のテーマは「民間賃貸住宅市場を巡る紛争の状況などについて」。先に発足した一般社団法人全国賃貸住宅保証業協会から参考人として中島拓氏(ジェイリース社長)が招かれ、同協会の設立趣旨、目的・業務内容などが中島氏から報告され、論議された。

 今回の論議の目玉でもある同協会が作業を進めている信用情報のデータベース化については、「ブラックリスト化につながらないか」「モラルに欠ける借り手もいるかもしれないが、モラルに欠ける業者と同等に論議していいのか」などの意見も述べられたが、「リスク管理能力を向上させる意味で望ましい方向」「真面目に(家賃を)払っている人にとってはプラス・得する制度」などの意見もあった。

 同協会は、今後データベース化の作業を進め、来年2月ぐらいに立ち上げるという。当初会員は20社を予定しており、市場の80%をカバーするという。運用は1年半後を目指すという。

 また、住宅困窮者に対するセーフティネットを構築すべきとの意見や、業界からは賃貸住宅管理業に対して法制化すべきという意見もあった。さらに「いろいろ意見を求められているが、論点がはっきりせず何を話したらいいか分からない」などの意見も出された。

 部会はあと1回開いたのち答申としてまとめられる予定だ。

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 記者は賃貸住宅のことはよく分からないが、この「部会」がどのような答申を出すのか興味があり、ほとんど毎回傍聴してきた。賃貸住宅の市場整備、質的向上が喫緊の課題だと思っているからだ。

 しかし、記者がもっとも注目していた質的向上については、残り1回の論議でまとまるわけがなく、厳しいことを言えば、この部会は何の成果もあげることなく終了ということになりそうだ。浅見部会長も「(政権交代もあり)方向性が見えない部分もある。意見を一つに統一するよりも、様々な意見を併記してまとめるのが正しい道ではないか」と語った。

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 賃貸住宅市場について、現状を把握し様々な意見があることを報告するのはそれはそれで結構なことだ。しかし、20人近い専門家やそれ以上の国交省の担当者を集め約1年かけて論議した結果が、様々な問題提起に終わるようでは何のための部会かということが問われそうだ。記者は、前回「甲論乙駁の部会」「この部会はどこに行き着くのか」と書いたが、その通りになりそうだ。

 社会問題となっている「更新料」「礼金」などについてもほとんど論議されないで終わりそうだ。日管協は、これらの問題について消費者への適切な情報開示と公平な業者間競争を確保するためとして「実質賃料表示制度」をスタートさせたが、このような制度は無花果の葉っぱ≠ナはないかと思う。そもそも裁判で是非の双方が判定されること自体が問題だ。グレーゾーンをなくすことが先決ではないか。

 「部会」の答申内容によっては、分譲市場に大きな影響を与え驚異となると思っていたが、まだまだ「賃貸から脱出してマンションを買う」傾向は強まりそうだ。 安堵するとともに残念な気持ちも強い。

甲論乙駁の様相呈した第8回民間賃貸住宅部会(10/19)

(牧田 司 記者 11月10日)