RBA HOME> RBAタイムズHOME >2009年 >


甲論乙駁の様相呈した第8回目の賃貸住宅部会

 賃貸住宅を巡る紛争の未然防止、滞納・明け渡しを巡るトラブルの解消、賃貸ストックの質の向上を目指す社会資本整備審議会住宅宅地分科会の「民間賃貸住宅部会」(浅見泰司部会長・東大空間情報科学研究センター教授)が10月16日、国交省内で開かれた。

 部会は今回が8回目で、前回の消費者団体などからのヒアリングを踏まえたフリーディスカッション方式で行われた。

 消費者団体などから寄せられた声は、@更新料は賃料に含めるべきA家賃滞納履歴などの信用情報のデータベース化は、社会的弱者を民間賃貸住宅から排除するものB原状回復の基本的な考え方を徹底したガイドラインの策定C「追い出し屋」に対する法規制D家賃債務保証業者に対する法規制E違法行為に加担した不動産業者に対する刑事上の責任――などだ。

 これらに対し、会は各委員から意見が噴出、まさに甲論乙駁の様相を呈した。@個人のデータベース化は悪用されないかA悪質業者の定義は何かB悪質などはアプリオリにあるものではないC悪質業者はほんの一握り、まさに悪貨が良貨を駆逐する状況Dデータベースをやるのかやらないかを決めるのが先決E保証業者の登録制度に一定規模以上の大家も含めて欲しいF市場の活性化と住宅福祉を分けて論議しないとまとまらないG情報の非対称の解消こそ国の役割H現行法でも悪徳業者は規制できるH公的住宅は足りているのかI滞納データが少ないJそもそも居住権とはなんぞや――などだ。

 ◇      ◆     ◇

 今回はフリーディスカッション方式だから様々な意見が出るのは当然だが、議論を聞きながらこの部会はどこに行き着くのだろうと思った。記者は賃貸住宅についてはよく分からないが、トラブルが絶えないのも、新たな「追い出し屋」問題が社会問題化しているのも、全て貧困な賃貸住宅政策に原因があると考えている。

 分譲市場をずっと取材担当してきた記者にとっては、賃貸市場が整備されるのは複雑な気持ちだが、分譲と賃貸がお互い競り合う形で良好なストックを形成するのが望ましい姿だろう。

(牧田 司 記者 10月19日)