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   国交省
環境不動産の見える化$iめる研究会発足


「グローブコート大宮南中野」

 国土交通省は12月19日、「不動産における『環境』の価値を考える研究会」を設置し、第1回目の会合を開いた。

 同研究会は、「環境」をテーマにして不動産の価値を高め、優良な不動産ストックの維持・創出を図るため、国内外の環境価値の高い不動産(環境不動産)を巡る状況や投資動向などの現状を把握し、環境不動産が多様な関係者に認識・評価される方策の検討、課題の整理を行うのが目的。

 研究会メンバーは13名委員と6人のオブザーバーで構成され、座長は野城智也・東京大学生産技術研究所教授が務める。今年度末に最終案をまとめる。以下、主な委員の発言を紹介する。(順不同)

吉田二郎・東京大学大学院経済学研究所講師 この問題では理念が優先しがちで、とらえる人によってかなり温度差があり、論議がまとまらない。定量的に示すデータもなく整備が必要。経済効果がデータで示されれば税制措置もとりやすい

新地哲己・芝浦特機社長 これまで6棟約300戸の全世帯太陽光発電付き賃貸マンションを建設したが、竣工までに全室満室になった。わたしのようなコンサルがいないと、全国には広がらない。わたしは、徹底した営業マン教育をやっているから、立地条件など悪くても賃借人が集る

網野康彦・GEリアル・エステート取締役事業企画本部長 オーナーはもちろんテナントにも経済的メリットが見えるようにすべき。規制強化とインセンティブ両面から取り組むべき。いま、浅草で環境共生型のマンションを分譲しているが、厳しい市場にも関わらず7割が売れている。ただ、環境共生によるコスト高を分譲坪単価に転嫁できないのが現状だ

伊藤雅人・住友信託銀行 不動産コンサルティング部 不動産鑑定室 鑑定・ CSR 担当次長 テナントは省エネ意識が薄いが、経済メリットを還元する仕組みや、賃料に反映できるようにすべき

井上成・三菱地所都市計画事業室副室長 街づくりと環境をテーマに取り組んでいるが、容積率アップ、税制、補助金、顕彰などいろいろあるが、容積率の割増は CO2 の絶対量を増やすことにもなり、そのジレンマの狭間に苦しんでいる。ハードとソフト、建設時と運用時、新規と既存、オーナーとテナントなど様々な切り口で考え、施策誘導すべき

小町利夫・企業年金連合会年金運用部 バリアフリー、耐震性などの総合的評価が分かりやすく理解できるシンプルな評価制度が必要

小林誠・東京電力販売営業本部部長 ヒートポンプの普及を図っているが、イニシャルコストが高い。環境不動産を家賃に転嫁できるのか。マーケットだけに委ねていいのか。負担と利益をみんなで享受できるようなモニタリングも必要

高井啓明・竹中工務店設計本部設備担当部長 キャスビーの認知度を高める情報開示が必要。環境評価と不動産評価をどう一致させるかも課題

平松宏城・ CSR デザイン&ランドスケープ設計事務所社長 定量的に価値を量れるシステムが必要。投資家は保守的な姿勢を取りがちで、新たなエコロジーを切り口にしたマーケットも必要

◇    ◆    ◇

 記者は、「環境」をテーマに20年ぐらい取材を続けてきた。環境共生に配慮したマンションや建売住宅を100カ所ぐらいは取材してきただろうか。

 環境共生のはしり≠セった、日本勤労者住宅協会の多摩地区のマンション現場では、管理費が相場より5割ぐらい高かったこともあり、モデルルーム見学者が「環境共生ってお金がかかるんですね」と言ったのを今でも忘れない。

 埼玉県住宅供給公社が大宮市の郊外で竹中施工の「グローブコート大宮南中野」という素晴らしいマンションを供給したのもよく覚えている。当時、関係者から「究極の環境共生マンション」として絶賛された。

 しかし、供給者の意図、コンセプトがユーザーに全く伝わらず、平均54%もの大幅値引きをして完売まで6年ぐらいかかったのもショックだった。環境共生は売れない≠ニマンションデベロッパーは嘆いた。

 ユーザーにはほとんどインセンティブが与えられず、環境共生マンションの供給が伸びないのに苛立った記者は、石原都知事に「環境共生マンションは都市計画税、固定資産税の減免措置をとるべき」と質問までした。石原都知事には「いい考えだ。検討しよう」と答えていただいたが、いまだに実現していない。

 しかし、一昨年、都のマンション環境性能表示制度で初の星12個を獲得した明豊エンタープライズ「シェルゼ木場公園」が早期完売したのは本当に嬉しかった。取り組み次第では価格が3割高くても売れることを実証したからだ。

 各委員には埼玉公社と明豊エンタープライズのマンションをぜひとも見学して頂いて、関係者から話を聞いて欲しい。この2つの物件に環境問題の難しさと解決のヒントが隠されている。

 もう一つ、研究会のテーマとして環境共生=人に優しい、つまりユニバーサルデザインの視点をぜひとも取り入れていただきたい。


「グローブコート大宮南中野」

人気必至 明豊エンターの外断熱「シェルゼ木場公園」(2006年10月3日)

マンション環境性能表示ランキング(2007年9月3日)

 

(牧田 司 記者 12月19日)