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虚と実を垣間見た2社の情報開示

 

 昨日の上場不動産会社の情報開示で興味深く読んだのが2つあった。一つはフージャースコーポレーションの「平成21年3月期 第2四半期 営業概況のお知らせ」であり、もう一つは総和地所の「 主要株主の異動に関するお知らせ」であった。

 最近の各社の情報開示といえば、業績予想の下方修正が圧倒的に多く、会社更生法の申請も日常茶飯化している。このような情報開示を見るにつけうんざりしているのだが、フージャースの「営業概況のお知らせ」は、不十分ではあるが、一般のユーザーに対しても良心的な情報開示だと思った。

 予定通りに販売が進まないのはどこも一緒だが、具体的に戸数を示して概況を報告するのはデベロッパーにとって必要なことだ。このように厳しい時期だからこそ、ユーザーを安心させるためにもどんどん報告すべきだろう。

 同社については、昨年、マンション空白区の埼玉新都市交通伊奈線羽貫駅の「グランディーナ」(206戸)を1年間で売り切ったという記事を書き、今年は、大激戦地のつくばで「 デュオヒルズつくば竹園」(207戸)も 1年間で売り切ったという記事を書いた。

 記事は足で書け≠ニはよく言ったもので、現地に足を運ぶとなぜ売れるのか≠ェよく分かる。詳細はその記事を読んでいただきたいが、一言で言えば誰に何を売るか≠ェしっかりしているマンションだ。

 もう一つの総和地所の情報開示は、フージャースのそれが自主的なものというのに対し、同社のそれは情報開示が義務付けられている事項という点で対照的だった。それより驚いたのは、本店が英国領西インド諸島のケイマン諸島にあるアンビリカル・キャピタル・リミテッド社が同社の株式5000株を取得し、株主順位2位に踊り出たということだった。

 株価が大暴落している同社株を大量に取得するアンビリカル社とはいったいどんな投資会社だろうかと、まさにアンビリカル(バブル)≠セった。

 ケイマン諸島は、記者が好きな作家の1人であるジョン・グリシャムが小説の中でマネーロンダリングの舞台に設定した場所だし、このほかのアメリカ、イギリスの小説には頻繁に登場する地名だ。

 この2つの情報開示を読みながら、虚と実の世界を垣間見たような気がした。アンビリカル≠ニは、「umbilical」のことらしく、へその緒、命綱などの意味があるそうだ。意味深な言葉だ。

フージャース マンション空白区の伊奈で206戸完売へ(12/3)

フージャース「デュオヒルズつくば竹園」207戸ほぼ完売(2/20)

(牧田 司 記者 10月15日)