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「団塊世代よ、平成の屯田兵になろう」

東急リロ・大川陸治相談役

大川陸治氏

 

「晴耕雨読でいい。国土保全、地域の活性化にも役立つ」

 「団塊世代よ、平成の屯田兵になろう」――こう呼びかけているのは東急リロケーション・大川陸治取締役相談役(64)。

 屯田兵(とんでんへい)なんて知らないと言う人のために、若干説明を加えよう。

 フリー百科事典「ウィキペディア( Wikipedia )」によれば、「屯田兵とは、明治時代に北海道の警備と開拓にあたった兵士とその部隊のことで、明治7年(1874年)に制度が設けられ、同37年(1904年)まで続けられた。(中略)屯田兵は家族を連れて入地し、入地前に建てられ用意された『兵屋』なる家と、未開拓の土地とを割り当てられた。兵屋は一戸建てで村ごとに定まった規格で作られた。広さは畳敷きの部屋が2部屋、炉を据えた板の間、土間、便所からなり、流し前は板の間あるいは土間におかれた。決して贅沢な間取りではないが、当時の一般庶民の住宅よりは良かったという」

 もちろん、大川氏は、北海道の開拓兵士になろうとは言っていない。避暑地の北海道や避寒地の沖縄、さらには財政的に疲弊している地方に3〜5年、リロケーションして地域の再生・活性化のお手伝いをしてはどうかというニューライフスタイル提案だ。

 大川氏はこういう。

 「団塊世代に移住先で永住しろとか、地域のコミュニケーションを図れというのはちょっと厳しい。晴耕雨読、田んぼの草むしりでいい。生業にしなくていい。しかし、自分で野菜や米を作れるようになるまでには最低で3年はかかる。休耕地や放置農地を耕すことは、自己の健康管理はもちろん国土保全にもつながるし、地域の活性化にも役立つ」と。

 続けてこういう。

 「安心して移り住むためには環境づくりが必要だ。国土交通省、厚生労働省、農水省、自治体などが一緒になってプログラムを作成することだ。

 具体的には、現在、住宅困窮者しか入居できない公共住宅を移住者に開放するとか、新たに地方の国内材で賃貸住宅を建設すればいい。移住者があらたに住宅を購入するというのは経済的な問題もあるし、肩も凝る。

 私はタウンハウスがいいと思う。坪30万円、1戸1000万円として、家賃5万円で、20年で回収できる。もちろん、入居者はそこで生活するわけだから、かなりの経済波及効果もある」

 大川氏の提案は、データ的な裏づけもある。国交省や東急住生活研究所などの調査によると、シニア層の4割は条件が整えば積極的に住み替え・移住を健闘すると答えているし、現住宅を賃貸していいと答えている。

 大川氏の試算では、現住宅を5年以上の定期借家で賃貸して受け取る賃料と、地方で借りる家賃とでは月10万円程度(年間120万円)の家賃差があり、海外ロングステイ3カ月分の家賃30万円、飛行機などの移動費50万円(2人分)を差し引いても40万円ほどはスペアとなる。

 定期借家制度やリバースモーゲージの組み合わせなどによって、新しいライフスタイルはより現実味を増すというわけだ。

 大川氏は1942年、三重県熊野市生まれ。1966年、京都大学法学部を卒業。70年、東急不動産に入社。同社常務取締役を経て02年、東急リロケーション社長に就任。06年、同社取締役相談役に。ファイナンシャルプランナー(CFP)のほか不動産鑑定士、土地区画整理士などの資格を持つ。東急不動産時代には金融制度審議会のオブザーバーを務め、不動産証券化、環境共生型戸建ての開発などで大きな功績を残した。共著に「展望 日本の不動産証券化」(2000年11月、大成出版)。

 現在、鹿児島県霧島市のロングステイを組み込んだ一時住み替えリロケーションを実現すべく活動中だ。 明日(11月22日)、64回目の誕生日を迎える。

 

(牧田 司記者 11月21日)