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 再び増える熱海市のリゾートマンション

市は高さ規制・用途規制で抑制へ


お宮の松の眼前で分譲され、完売となったリゾートマンション

 

 リゾートマンションの凍結解除で再び熱海市でのマンション供給が目立つようになってきた。売れ行きも総じて好調という。そこで、10数年ぶりに熱海市のリゾートマンションの取材に出かけた。今後の供給動向を探るとともに、リゾート熱海の現況をつぶさに見るのが目的だ。

 熱海でリゾートマンションの供給ラッシュが始まったのは昭和60年に入ってから。それまでは年間数件の申請しかなかったものが、昭和60年には9件(計画戸数1901戸)になり、62年35件(同2127戸)63年68件(同7013戸)平成元年66件(同8371戸)2年54件(同4694戸)と激増した。坪単価も300万円を軽く突破、坪500万円の物件もあったと記憶している。

 供給増に慌てた市は、平成3年からマンション凍結を決めた。その結果、平成9年度までは申請は0件が続いた。そして、凍結解除を決めた平成10年は1件(同141戸)11年3件(233 戸)12年3件(同211戸)13年3件(同196戸)14年0件、15年3件(同163戸)16年1件(同194戸)17年0件と推移している。現在、事前相談があるものだけでも7〜8件あるという。中には39階建てを含む600戸の大規模なものも計画されているという。

 再び供給されるようになったのは、もちろん凍結解除されたためだが、その背景にはバブル崩壊後の旅館・ホテルの休廃業がある。市内の旅館・ホテル・寮・保養所は平成12年には503件だったものが、16年は394件と約22%減少。

 昭和63年以前には9件しかなかった休廃業がバブル崩壊後、徐々に増えだし、平成8年には10件と二ケタに乗り、平成17年の4件以外は11年の36件を最高にずっと二ケタ台の休廃業が続いている。平成18年までトータルで254件に達している。熱海市の旅館・ホテルのざっと2割の数だ。リゾートマンションはその跡地に建つケースがほとんどだ。

 再び、リゾートマンションの供給増に苦慮した市は、建物の絶対的な高さ規制を含めた条例で規制強化に乗り出した。来年3月施行を予定しているもので、現在、計画がいくつかある東海岸町地区では、高さを原則として25メートルにするほか、その他の市中心部は21〜31メートルとする。用途規制も行い、東海岸町地区では建物の用途は店舗、ホテル、旅館などとし、共同住宅については容積率の上限は250〜300%とする。その他の市中心部についても共同住宅の容積率の上限を250〜300%とする。指定容積率が400%の場合、共同住宅は250%が上限で、残りの150%は共同住宅以外としなければならなくなる。

 市では、規制強化によっていわゆる既存不適格建築物は0.56%にとどまり、大きな混乱はないという。市まちづくり課では、「すでに全戸に規制の内容を盛り込んだ資料を配布しており、おおむね賛成の声をもらっている。定住率が約3割と少なく、1回の利用でかける費用も1万円ぐらいのリゾートマンションはもうお断りしたい」と言っている。

疲弊する熱海の経済 全てのデータで裏づけ

お宮の松も泣いている

 あらゆるデータが疲弊する熱海を浮き彫りにしている。以下、いくつかのデータを紹介しよう。

 まず人口。昭和52年の約5万2000人をピークに減りつづけており、平成17年には約4万2000人へと2割近く減少。1世帯あたりの人口もかつては2.6人だったのが現在では2人に減っている。総人口の約7割が単身者、あるいは2人家族だ。年齢が65歳以上の老齢化率は急速に高まっており、現在では約34%で、静岡県内でトップだという。

 市民税、固定資産税収も減りつづけており、市の一般会計歳入は平成12年度の約232億円から16年度は212億円へ8.6%減少。逆に市債は12年度では約16億円だったのが、16年度は約24億円に増加している。

 観光客も平成12年の約842万人から16年には763万人と10%近く減少。宿泊人数も12年の約313万人から16年は292万人へと7%減少。

 商店の経営も苦しくなる一方だ。平成3年には1084店、販売額1370億円だったものが、14年には825店、705億円へと、店舗数は24%、販売額は半減している。

 熱海市では大都市で見られるような所得の2極分化は見られない。総じて貧しくなっている図式が浮かび上がっている。市県民税の納付者は平成12年の約1万9000人から 17年には約1万8000人に減り、その一方で課税標準額が40万円以下の所得が低い層の比率が12年では13%だったのが、17年には16%に増加、1000万円超の所得が高い層の比率も5.7%から5.1%へ低下している。

 おもしろいデータがほかにもある。物価が総じて高いのだ。16年の食パン 1 . 5斤が167円(静岡県全体162円)、味噌 1キロ343円(同316円)砂糖1キロ194円(同180円)合成洗剤1 .5キロ455円(同406円)などだ。

 酒類消費も激減している。12年の総数が約4300キロリットルに対して、16年には約3000 キロリットルへと30%も減少。ビールに至っては37%も減っている。

 あらゆるデータが悪化している一方で、激増しているのが市民相談件数だ。平成12年には約1100件だったものが、16年には約1500件へと37%も増加。中でも法律相談・人権相談が200件から340件へ、消費生活相談が18件から282件へと大幅に増加している。

 ある市内のリゾートマンション販売担当者は、次のように語った。

 「マンション規制する前に、もっと街の活性化を図ってほしい。マンションを規制しても街の活性化にはつながらない」と。駅前のアーケード街は夕方6時を過ぎるとシャッターを閉じるところが多くなり、開いているのは飲食店ぐらいしかない。

 お宮の松も泣いているように感じた。

 


市内春日町の高台から熱海湾を望む

(牧田 司記者 10月23日)