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多摩センターのマンションはなぜ価格が低いのか

多摩センター駅前

 

新住法は完了したが…その名残が残るのも一因

 今回は、わが街、京王相模原線多摩センターについて触れる。あちこちのマンションを見学するにつけ、「なぜ多摩センターのほうが安いのか」とつくづく思い知らされるからだ。

 多摩センターは京王線新宿駅から27分、新住宅市街地開発法(新住法)と区画整理事業によって都市再生機構や東京都などによって開発されたニュータウンの中心地だ。

 駅南口からパルテノン多摩に続くレンガ敷きの舗道は幅約40メートル。そのパルテノン多摩には広大な多摩中央公園が隣接し、公園には宿泊施設「サンピア多摩」がある。晴れた日には富士山がほとんどの地域から眺められる。四季を通じで樹木の緑や草花も楽しめる。自然を残した公園では、全滅種といわれる草花を思いがけず発見することもある。素晴らしい街だ。

 現在、多摩センター駅圏では東京建物・丸紅・伊藤忠都市開発の「 Brillia 多摩センター」(530戸)や藤和不動産「藤和シティホームズ多摩落合」(58戸)などが分譲中だ。坪単価は145〜150万円だ。駅から徒歩10〜18分だ。

 昨年分譲され、人気になった駅から徒歩3分の大京「ライオンズプラザ多摩センター」(160戸)でも坪単価は175万円だった。

 この多摩センター駅圏の分譲単価がいかに低いかを他と比べてみよう。

 新宿から小田急線でほぼ同じ時間圏の新百合ヶ丘は、駅近で200万円をはるかに突破しており、駅10分圏では190万円ぐらいだ。売れ行きも極めていい。

 「街のポテンシャルが違う」と反論する向きもあるだろうが、多摩センターと新百合ケ丘の街の熟成度、生活利便施設などの充実度を比較しても、多摩センターが位負けしているということはない。

 京王プラザホテルがあり、三越デパートがあり、世界の小澤征爾さんが毎年のようにパルテノン多摩で定期コンサート(新日本フィル)の指揮をとる。前述したように、車道と歩道が完全に分離されており、徒歩圏20分ぐらいまでは子どもの交通事故の心配をしなくて済む…こんな街が他にあるだろうか。

 多摩センターと同じ単価相場は西武線東大和、横須賀線東戸塚、京浜東北線川口、東武伊勢崎線竹ノ塚、つくばエクスプレス流山おおたかの森、東武野田線新船橋あたりだろうか。同じ京王線でも京王本線の各駅停車駅・武蔵野台のほうがまだ高い。

 他の沿線の批判はしたくないが、どうして多摩センターが東大和や川口、竹ノ塚、流山おおたかの森、新船橋などと同じなのだろうか。おおたかの森などは駅前に大型ショッピングセンターができる以外何もない街だ。

 多摩センターの単価相場が低いのは、新住法の規制で1戸当たりの面積を大きくせざるを得ず、坪単価を抑える力が働くことが考えられる。新住法そのものは今年3月で完了しているが、まだその名残が残っているのも事実だ。

 単価が低ければ、それだけ購入価格も安くなり、買う側にとってはありがたいことではある。しかし、街のポテンシャルがあがらないと何かと影響も出てくる。デベロッパーは、街のポテンシャルをあげ、地域を活性化させる役割も担っている。多摩センターの単価が高くとも、グロス価格が高くとも売れるようなマンションを供給して欲しい。

 また、都市機構や市当局も、新住法の事業としては今年3月で完了しているのだから、面積要件など柔軟な対応を期待したい。

 

(牧田 司記者 6月21日)