旭化成ホームズが産学共同の

「人と住環境研究会」発足

 

宿谷昌則・武蔵工大教授と共同研究

 旭化成ホームズが先ごろ、武蔵工業大学環境情報部・大学院環境情報学研究科の宿谷昌則教授を座長とする産学共同研究会「ひとと住環境研究会」を発足させた。

 現在の機械的空調設備による室内環境の制御が、ひとの身体的環境適応能力を低下させ、子どもの低体温症、起立性調節障害などの増加の一因になっているのではないかという指摘がある。同研究会は、そのような室内環境を一定に制御することによる快適≠ニいう概念をとらえなおし、ひとの健康と快適性を両立させる住環境のあり方を研究することを目的としている。

 具体的には、@ひとの生理・心理からとらえた快適性の研究A健康・快適性と省エネルギーを両立させる住まい・ライフスタイルの研究Bそれらの研究成果を反映したコンセプトハウスの建設――などを3〜4年かけて行う。

 同社は、平成14年に発売した「ヘーベルハウスそらから」、平成16年に発売した「ヘーベルハウスかぜのとう」などの商品や、日照・通風シミュレーションシステム、地中熱利用冷暖房システムの開発を通じ、住環境と省エネルギーをあわせて追究してきたが、この研究会でさらに取り組みを強化するのが狙いだ。

 スタッフは、宿谷教授をはじめとする12名(武蔵工大3名、旭化成ホームズ9名)。

●エクセルギー理論とは

 同研究会の記者発表が行われた4月26 日、宿谷教授は興味深いことを話された。持論である「エクセルギー」理論を披瀝したのだ。

 宿谷教授によると、省エネルギーの推進∞エネルギー消費の削減≠ネどの表現は、エネルギー保存の法則に照らし合わせれば正確ではなく、節水を心がける≠ニいう表現も、「資源性」があるエネルギーを無駄遣いしない、あるいは「資源性」のある水を無駄遣いしないということが正確な表現だが、この資源性という言葉を定量的に表せる概念がエクセルギーという。

 エクセルギーは、@質量保存の法則Aエネルギー保存の法則Bエントロピー増大の法則に < 環境温度 > の概念を組み合わせることで得られるが、資源性を表現するのに < 環境 > という理数的には表しにくい概念を、環境温度として資源性を表すのにあらわになって関係してくるところが、エクセルギー概念の大きな特徴という。つまり、エネルギー・環境問題を理数学的に理解するのに不可欠な概念だという。

 建築環境システムの内外で、照明や暖房・冷房、換気システムがエクセルギーをどのように取り込み消費しているかを知れば、システムのどこをどう変えればエクセルギー消費を小さくできるかが分かるという。 

 宿谷教授は話の中で、住宅の断熱性を高める一方で、すだれなどをマンションのベランダに採用するなどわが国古来の住まいの知恵を取り込むことを強調した。エクセルギー理論の中からどんな住宅が提案されるのか期待したい。

 

(牧田 司記者 5月1日)