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国交省の不動産取引価格の公表に疑問

今年度予算だけで4億5000万円の費用

 国土交通省が4月27日から始めた「不動産取引価格公表」データを閲覧した。守秘義務の問題もあるので、それほど詳しい情報は公表されないだろうと予想はしていたが、閲覧してがっかりした。これでは、一般ユーザーにとって一定の目安にはなるかもしれないが、知りたい情報はほとんど盛り込まれていないからだ。

 例えば、マンション取引価格について閲覧すると、次のようなデータが表示されている。

 港区のマンションを例に取ると、表示されるのは、住所(東京都港区六本木)、取引時期(平成17年第4四半期)、土地の種類(商業地)、取引の内容(マンション等)、価格(¥ 21.000.000 )、面積(30u)、建物の用途(居宅)、建物の構造(SRC)、間取り(1DK)、建築年(昭和56〜60年)、用途地域(第一種中高層住居専用地域)だ。

 知りたい坪単価、あるいは平方メートル当たり単価は空欄になっているし、築年数は5年から10年の幅が設けられている。築年数が分からないようになっているのは、物件が特定できないようにしているためだと思われるが、一般の人にとっては、知りたい情報だろう。

 このほか、一般の人が利用する上で不満なのは、@住所が町どまりで、具体的な地域が分からないA最寄駅からの距離が分からないBマンション全体像が分からない――などがあげられよう。

 ある大手の仲介担当者も「物件はある程度特定はできるが、これではプロは使えない。一般の方にとっては、目安にはなるかもしれない」とそっけない。

 具体的な取引事例を知るには、やはり街の仲介会社の窓口を訪ねるか、住宅情報誌などの売買情報を見たほうがよいということのようだ。

 一般の人もプロも使えないとなると、誰にとってメリットがあるのか。この制度の目的でもある「不動産市場の透明化、取引の円滑化・活性化」にどれだけ寄与するのかも疑問だ。

 さらに問題なのは、「ある程度の目安になる」ためだけの制度に、ばく大な国費を投入していいのかということだ。

 この制度の実施に伴って17年度予算で3億4000万円、18年度は4億9000万円の予算措置が取られている。今回、取引価格が公表されたのは約1万8000カ所で、将来的には50万カ所に増やすという。単純にその費用が増加するわけでもないだろうが、今より数倍か数十倍に増えるのは間違いない。

 始まったものを止めるわけにはいかないだろうが、費用をかけないでも一般の人が参考にできる手法は他にあるのではないだろうか。

 

(牧田 司記者 5月1日)