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国交省とレインズの不動産取引価格公表 どっちがいいか

国交省は購入者アンケート方式で実施

 4月 11日付日経新聞で報じられたように、国土交通省は不動産の取引価格を公表することで作業を進めている。報道によれば、不動産登記簿をもとに購入者から情報を収集して、四半期ごとに公開するというもの。一般消費者や投資家に透明性の高い情報を提供することによって、取り引きを円滑に進めるのが目的という。

 具体的には不動産登記簿情報をもとに対象地域の不動産購入者全てに調査票を送付し、回収した調査票は、不動産鑑定士が実際の不動産を調査した上で情報の正否を精査するという。

 公表する地域は、当面東京23区などの都心部で、06年度中には全国の政令都市に広げ、最終的には全国で最大50万地点をカバーするという。

国交省制度に懐疑的な不動産業界

 この不動産取引価格の公表については、数年前から論議されており、賛否両論がある。不動産業界の声はおおよそ次のようなものだ。

 第1に、一般消費者の中に不動産価格に対する不信感があるのは事実だが、公表が義務付けられない限り、実際に自分が買った物件の価格を公表したがらないという指摘がある。国交省の考えどおり情報は集まらないとする声だ。

 第2に、後述するように、業界内ではすでにレインズで取引価格が登録されており、これを利用すれば公開できるという声だ。レインズ関係者は、「レインズは総合政策局不動産業課が管轄するラインで、報道されているのは国交省の土地・水資源局土地情報課が管轄。同じ省内で同じことをやるのはいかがなものか。国の予算措置でもレインズは年間3700万円なのに対し、向こうは3億円(17年度予算で3億4000万円)とけた違いだ」と、新たな取引価格の公開制度には懐疑的だ。

 レインズとは別の取引価格公表を進めている土地・水資源局では、不動産取引価格の公表にかかる予算要求として18年度は4億9000万円を要求している。同局は、地価公示や不動産鑑定に関する業務を管轄しているところだ。ちなみに地価公示制度には年間約 50 億円が注ぎ込まれている。

 双方で進めている不動産取引価格の公表によって誰が一番メリットがあるのかは分からないが、同じ省内で同じことをやろうとしているのは誰もが理解に苦しむところだろう。

レインズとは

 レインズとは、 Real Estate Information Network System の略で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムの名称で、同機構の会員不動産会社がパソコンや FAX を利用して、機構内に設置してあるホストコンピューターから不動産情報を受け取ったり情報提供を行ったりするシステム。会員間での情報交換がリアルタイムで行われている。同機構に加入している不動産会社は約6万5000事業者、年間登録される物件データは約150万件、年間アクセス数は6000万件にのぼっている。

 レインズに登録された不動産価格は、第三者に開示してはならないという厳しい規制があるため、一般の人が具体的な取引価格を知ることはほとんど不可能なのが現状だ。

 ところが、「不動産価格は分かりづらい」という消費者などの声があるため、レインズでも、一般消費者に取り引き事例をインターネットなどで公表することを検討している。具体的には、個別の地点について縦軸を価格、横軸を築年数にしてグラフで価格の推移を分かるようにするという。公表に当たっては、個人情報の保護の観点から事例が多い地点を選び、なおかつ物件が特定できないようにするという。

 

(牧田 司記者 4月11日)