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明和「国立裁判」住民の敗訴が確定

景観利益に対する違法行為とは、刑罰法規や行政法規の規制に違反

公序良俗違反や権利の乱用に該当するもの

 国立市の通称「大学通り」に明和地所が建設した高さ44メートルの「クリオレミントンヴィレッジ国立」マンションをめぐって、住民らが20メートルを超える部分が「市の条例に違反し景観権を侵害するもので撤去せよ」などと求めていた上告審判決が3月30日、最高裁であり、甲斐中辰夫裁判長は上告を棄却した。住民側の敗訴が確定した。

 景観利益について判決では、「良好な景観に近接する地域内に居住し、その恵沢を日常的に享受している者は、良好な景観が有する客観的な価値の侵害に対して密接な利害関係を有するものというべきであり、これらの者が有する良好な景観の恵沢を享受する利益 ( 以下「景観利益」という ) は、法律上保護に値するものと解するのが相当」と述べている。

 しかしその一方で、「この景観利益の内容は、景観の性質、態様等によって異なり得るものであるし、社会の変換に伴って変化する可能性のあるものであるところ、現時点でにおいては、私法上の権利といい得るような明確な実体を有するものとは認められず、景観利益を超えて『景観権』という権利性を有するものを認めることはできない」としている。

 さらに、「景観利益は、これが侵害された場合に被侵害者の生活妨害や健康被害を生じさせるという性質のものではないこと、景観利益の保護は、一方において当該地域における土地・建物の財産権に制限を加えることとなり、その範囲・内容等をめぐって周辺の住民相互や財産権者との間で意見の対立が生ずることも予想されるものであるから、景観利益の保護とこれに伴う財産権等の規制は、第一次的には、民主的手続により定められた行政法規や当該地域の条例等によってなされることが予定されているものということができることなどからすれば、ある行為が景観利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには、少なくとも、その侵害行為が刑罰法規や行政法規の規制に違反するものであったり、公序良俗違反や権利の乱用に該当するものであるなど、侵害行為の態様や程度の面において社会的に任用された行為としての相当性を欠くことが求められる」とした。

 本件については、大学通り周辺の景観は、「景観利益を有する」としながらも、市条例が改正された平成12年2月1日当時、明和地所は工事着工を行っていたと認定、高さ20メートル定めた条例は適用されないとした。

 また、建物が景観を乱すかどうかについては、「相当の容積と高さを有する建築物であるが、その点を除けば本件建物の外観に周囲の景観の調和を乱すような点があるとは認め難い」とした。

最高裁判決は当然 市の条例改正は明らかに公正を欠く

 この国立問題について、記者はマンション計画が持ち上がった段階から取材を進めてきた。何度も現地に足を運び、住民の話を聞き、上原市長にもインタビューした。計画段階では、絶対的な高さを制限することなどは市長も考えていなかったと断言できる。いつのまにか「イチョウの高さと同じ20メートル」という数値が一人歩きしていった。条例改正は、明らかに市の後だしジャンケン≠ナ、明和地所の建物のみを対象とした点で、極めて公正さを欠いていた。

 その点で、今回の判決は当然だ。ただ、双方が十分話し合っていたら、もっと別の解決策がみつかり、ランドマーク的なマンションが建ったはずだ。それを思うと、残念でならない。

 この国立問題については、もう一つ、明和地所が市を相手取った行政訴訟がある。平成17年12月19日の東京高裁判決では、明和側の主張をほぼ認め、国立市に2500万円の損害賠償を支払うよう命じている。市は上告を断念したが、市側の補佐参考人である住民5名が、最高裁に上告した。

 

(牧田 司記者 3月31日)