耐震偽装問題 「違法行為は暗黙の了解」姉歯氏が証言

 

 耐震強度偽装問題を審議する衆議院国土交通委員会は12月14日、偽装に関わった姉歯秀次元一級建築士などを証人喚問した。姉歯氏は、偽装の違法性について木村建設・篠塚支店長らは認識していたはずと各委員の質問に答えた。

違法行為は98年の「グランドステージ池上」が最初

 9時30分から11時45分まで行われた証人喚問で姉歯証人は、偽装が始まったのは1998年ごろの「グランドステージ池上」からで、これまで約60件について偽装したと答えた。

 偽装ノウハウは独自に考え出したと答えたが、「構造のプロが見れば一見して偽装は見破られたはず」と答えた。

 取引先からの圧力については、木村建設・篠塚支店長から「鉄筋の数を減らせと、具体的な数値を示されて指示された」「シノケンは木村建設に丸投げ≠オていたから、直接的な圧力はなかった。ヒューザーについては、分からない」と、木村建設以外からの圧力については、明確な答えを避けた。

「やってはいけないと思いつつも、弱い自分があった」

 偽装に踏み切ったことについては、「『これ以上は無理です』と何度も直接篠塚氏に伝えたが、仕事の9割以上は木村建設からの請負で、『(構造計算は)他にもいくらでもある』といわれると、病気気味の妻がおり、収入がゼロになるのでやらざるを得なかった。やってはいけないと思いつつも、弱い自分があった」「違法行為については暗黙の了解があったはず」と答えた。

 篠塚支店長に対しては、合計7回総額約200万円のキックバックを行ったと証言した。

「イーホームズは明らかに審査していない」

 建築確認検査機関のイーホームズについては、「当初は日本ERIに申請を出していたが、3カ月の営業停止があったためイーホームズに切り替えた。イーホームズは、2週間で確認がおりるが、担当者は数時間しか見られないはず。質問も受けたが、単純なものばかりだった。明らかに審査していないのが実態」と答えた。

「偽装には関与していない」木村建設・篠塚元東京支店長

「コストダウン圧力は適法の範囲内」

 13時から2時間にわたって行われた木村建設・木村盛好社長、同・篠塚明元東京支店長に対する証人喚問で、木村社長は「違法行為は一切知らなかった」「よく分かりません」などとあいまいな答弁に終始し、篠塚氏は「偽装問題には関与していない」「(違法行為となる偽装は)あくまでも適法内の指示」と、偽装指示について否定した。

 篠塚氏は、「当社に構造計算のプロはいなかった。姉歯氏には『鉄筋の量を減らせ』とは会話の中では逝ったかもしれないが、それは経済設計、コスト削減をしろということで、コストを下げろというのは私の役割。姉歯以外の協力業者などにも常々言っていること」と述べた。

 篠塚氏はまた、姉歯氏からリベートを授受したかどうかという質問には「私の営業経費を捻出するため合計7回、総額 220万円を受け取ったが、事件が発覚後に全額返済した」と答えた。

 さらに、姉歯氏の偽装構造図より数%から10%耐震強度が低い施工図が発覚したことについては「作図のミスがあったと聞いているが、調査中」と証言し、木村建設自身も耐震強度偽装に直接関与していた可能性も浮上した。

「ホテル所有者の代理の仕事。偽装問題には関与していない」内河氏

 15時30分から始まった総合経営研究所・内河健所長に対する証人尋問で内河氏は「ホテルの経営指導に関与したホテルは238ホテル。このうち姉歯が関与したホテルが 27 あり 24 カ所で偽装が発覚した。姉歯氏は全然知らなかった。木村建設とは30年近くの付き合いだが、われわれはホテル所有者の代理人として仕事をまとめるのが役割で、偽装問題には関与していない」と証言した。

 しかし、馬淵委員の核心を突く具体的な指摘には、「初めて知った」「調べて回答する」とあいまいな答弁に終始した。

核心に迫った馬淵議員の質問「一気通貫の総研スキームがある」

 記者は、証人喚問が始まった午前9時30分から午後5時 50 分まで、固唾をのんで証人の答弁を聞いた。テレビを見ていたあれほど疲れたのも初めてだった。

 全体として議員の質問は、すでに報道されていることの追認などに終始し、勉強・取材不足が目立った。渡辺具能氏(自民党)は質問時間約30分をほとんどみずからの独演会≠ノ消費した。

 その中で、もっとも核心を突いていたのは、馬淵澄夫委員(民主党議員)の総研・内河健所長に対する質問だった。

 馬淵氏は、総研−平成設計(木村建設)−姉歯建築士が一体となって問題のホテル(マンション)の建設を進めてきた実態を具体的な関係者のメモをもとに明らかにした。「一気通貫の総研スキームを作った張本人はあなただ」と詰め寄った。馬淵氏の質問時間は総計50分で、全て総研・内河氏に関連するものだった。

 馬淵氏の指摘に対して、内河氏は「いま初めてそのメモを知った」「その件については全然知りませんでした」「その書類は見たことがない。調べて回答します」と述べた。

法律で決められた「建前」より「本音」がまかり通る現状に問題あり

 証人喚問をテレビで見ていて、建確検査事務、中間検査などが全く機能していないことを改めて痛感した。法律で決められた「建前」より、各現場に都合のいい「本音」がまかり通っている現状に問題がありそうだ。

 ある専門家は「建基法はザル法。矛盾だらけ。細則などが多すぎて理解できない」と言っていたが、もう抜本的に見直す以外ないと思った。

 

(牧田 司記者 12月12日)