RBAタイムズHOME > 2005年 > ニュース

商品差別化の武器になるノンレールサッシ

〜大和ハウスの新商品「センテナリアン 健康百彩」住宅の発売に思う〜

センテナリアン 健康百彩

「センテナリアン 健康百彩」

 大和ハウス工業は先ごろ、創業50周年記念商品として「センテナリアン 健康百彩」住宅を発売した。詳細は省くが、商品名である『センテナリアン(英: centenarian )』とは「 100 歳長寿者」の意味で、「この家に住むことによって、よりよい生活習慣・生活環境の中で心身ともに健康で自立した『センテナリアン』を目指す家」と位置付けられている。健康・安全・快適・経済性をテーマに50の提案と 100 のアイテムが盛り込まれている。素晴らしい住宅だと、記者も実感した。

 ところで、同社の記者発表会で記者がもっとも注目したのはユニバーサルデザインへの取り組みだ。1階部分はもちろん2階部分でも居室とバルコニーの高さがフラットになっていることだった。いわゆるフラットサッシ=ノンレールサッシが採用されていたのだが、しかも、業界で初という全開口サッシとして採用されていたのに驚かされた。

 ビルやマンション用のノンレールサッシについては、立山アルミが平成13年に新発売したあと、分譲マンションではたくさん見てきたし、15年には戸建て用も発売していたので、技術的には可能なのは分かっていたが、戸建てメーカーが採用したのを見たのは初めてだった。

 全開口サッシは、不二サッシが平成10年に発売したのが最初だった。これもその後、分譲マンションなどで採用されていた。ノンレールサッシと全開口サッシが合わさったことで、快適性は一段と進んだことになる。

 記者は、これまでノンレールサッシの普及スピードがなかなか上がらないのを歯ぎしりする思いでいた。普及スピードが上がらなかったのは、最初に開発した立山アルミが業界5位ということのほかに、業界関係者の無理解とコスト高(サッシそのものではなく、バルコニーに設置するデッキが1平方b当たり2〜3万円と高価)にあった。

 ノンレールサッシの開発については、立山アルミに続き新日軽が平成15年3月に、YKKAPが同年9月に、三協アルミが同年10月に(立山アルミと共同開発)、不二サッシが同年11月に、そしてトステムが平成16年10月にそれぞれ発売して、ほとんどのメーカーが揃ったことになった。デッキについても、マンションデベロッパーの山田建設が1平方b当たり数千円の低価格商品の開発に成功し、大和ハウスも独自の安価なデッキを開発した。他社も低価格のデッキを開発するのは時間の問題だろう。

 残されているのは、住宅に採用するかどうかを決める各社の判断一つだ。サッシの段差がなくなれば、掃除はラクだし、なによりバルコニーがリビングや居室の延長として利用できるのがありがたい。ノンレールサッシが採用されている住宅に住んでいる人の声を聞いても、@裸足でバルコニーに出たくなるAバルコニーが読書をしたりお茶を飲んだりするスペースに変ったB洗濯物の出し入れがラク――などと快適性が増したという声が多く寄せられている。

 現在、採用しているデベロッパーもあるが、そのよさを訴え切れていないものが多い。段差のあるサッシからノンレールサッシにすればどのように生活が変るかを、IHクッキングヒーターなどと同じように具体的に示して見せることが必要だ。

 IHクッキングヒーターもそうだが、低床バスが一気に普及したのも、モデルルーム見学者などがそのよさを目の当たりにしたからだ。ご存知ない方のために、浴室の出入り口の段差をなくし、浴槽またぎ部分の高さをほぼ50センチb以下にしている低床バスがどのように普及したのか振り返ってみよう。

 低床バスが開発されたのは阪神大震災の翌年、平成8年だった。松下電工、TOTO、INAXの浴槽メーカー大手3社がほとんど同時期に発売を開始した。そもそも被災者住宅の建築に際して、高齢者の入浴が楽になるようにと開発されたものだ。コスト的にも約2割は高かった。マンション業界関係者は、そのよさを理解はしてもコスト高を理由に採用を渋った。

 首都圏のマンションで初めて採用されたのは発売の翌年(平成9年)、扶桑レクセルの藤が丘マンションだったと記者は記憶しているが、当時「これはヒットする」と確信したものだ。その予感の通り、瞬く間に低床バスは普及した。価格が高くともユーザーが支持したからだ。普及しだした当初、あるマンションでは、購入動機のベスト3に低床バスの採用があげられていた。

 普及するにつれ、当然のようにコストも下がった。今ではわざわざ低床≠ニ言わなくとも、バスと言えば低床バスのことを言うまでに普及した。

 マンションも建売住宅も販売競争が激化している今、ノンレールサッシは間違いなく差別化の大きな武器になる。

(牧田 司記者 8月19日)