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用地取得からわずか6年で完成させる
「芝浦アイランド地区PJ」(3月1日)
 

 三井不動産等が参画する「芝浦アイランド地区プロジェクト」が本格始動する。開発面積が約6ヘクタール。約4000戸の分譲・賃貸マンションや公共施設などを都市機構と同社など民間8社が整備するプロジェクトだ。

 開発に当たっては、「ブロックリノベーション」の思想で街のデザインをコントロール。ジェネレーションミックスと市民の参加、周辺のつながりを重視する。分譲住宅の価格などは公表されなかったが、都心の超高層マンションのような高額にはならず、平均的なサラリーマンでも取得が容易な価格帯が中心になりそうだ。アイランドを1周する約1.3キロの遊歩道を設けるほか、港区が「保育園と幼稚園の一体化施設」を区内で初めて採用するなど新しい試みもみられる。

 記者が注目したのは、その規模やコンセプトもさることながら、同社住宅事業本部執行役員都市開発第一事業部長・磯辺真幸氏が記者発表の席上で「相当な開発スピード」と語ったように、開発スピードが並でないことについてだ。同プロジェクトは、平成13年度に都市基盤整備公団 ( 現都市再生機構 ) が東京都から土地を取得してからスタート。完成予定の平成19年まではわずか6年だ。

 三井不動産は、総面積約10.1ヘクタールの防衛庁跡地の「東京ミッドタウンプロジェクト」も推進中だが、用地を取得したのは4年前の平成13年。着工したのが昨年で、再来年の平成19年には完成するという。これもまた、再開発プロジェクトとしては信じられない開発スピードだ。

 以前、某大手デベロッパーの中規模マンション発売記者発表で、用地取得から分譲まで4年かけたという話を聞いた。近隣住民の建設反対運動にきちんと対応した結果だという。竣工は来年だ。つまり、用地取得から完成まで6年かかることになる。用地取得費がいくらかは分からないが、おそらく100億円は下らないと思われる。いくら低金利の時代とはいえ、この間の金利負担はバカにならない。この話を聞いて「このデベロッパーはもうおしまい」と感じた。敷地面積が三井不動産の「防衛庁跡地」の10分の1程度のマンション分譲に4年も5年もかける神経を疑った。この会社は早く速く≠ェモットーだった。顧客主義の真の意味をまるで理解していないと感じた。

 
時間がかかりすぎる日本の大規模開発
 

 さて、他のビッグプロジェクトはどうか。

 例えば「六本木ヒルズ」。開発面積は約11.6ヘクタールと「東京ミッドタウン」より大きいが、事業開始から完成まで17年もかかっている。開発面積が約8.3ヘクタールの「恵比寿ガーデンプレイス」も工場の閉鎖から完成まで9年かかった。同潤会アパートの建て替え事業である「青山アパート」「江戸川台アパート」などはおおむね20年から30年もかかっている。

 このように、わが国の開発事業には膨大な時間とカネがかけられてきた。複雑な権利関係の調整、許認可に手間取るのが主な要因だ。都市再生特別法の整備などの恩恵を受けたとはいえ、一連の三井不動産のプロジェクトはこうした悪弊を断ち切ってくれた。「開発は時間との勝負だ」とあるデベロッパーの幹部が語ったが、三井不動産はそれを実践している。


(牧田 司記者 3月1日)