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東京建物「品川シーサイド」即完の意味するもの(12月13日)
 

 東京建物が12月5日抽選分譲した「B rillia(ブリリア)タワー品川シーサイド」第1期100戸が最高8倍、平均1.4倍で即日完売した。品川シーサイドエリア初の定期借地権付き分譲マンション。りんかい線品川シーサイド駅から徒歩2分、22階建て全187戸 (分譲住宅171戸+賃貸住宅16戸)の規模だ。

 記者が予想していたのより競争倍率は低かったが、即完は当然の結果だろう。記者が興味を抱いたのはそんなことではない。都心部でこういった一次取得層をメインターゲットにした初めてのマンションということに対する驚きと、このマンションが若年層の都心回帰・都心志向を一層促す記念碑的な物件になるのではないかという予感に心をときめかせているのだ。

 高齢者を中心とする富裕層の都心回帰現象は、ここ数年の動きで別に驚くことではないし、単身者やDINKS層向けのコンパクトマンションもすでに沢山供給されていて、それなりの市場を形成している。しかし、若年ファミリー層にとって都心部のマンションはまだまだ高嶺の花だ。IT関連や大企業に勤める高年収層が都心部の高額マンションを購入するケースも少なくはないが、まだまだ多数派ではない。

 ところが、今回の「品川」は、ごく普通の若年サラリーマンでも容易に取得できる価格帯だ。定期借地権(期間約50年)であることが、それを可能にした。坪単価は約170万円。郊外並みの単価だ。グロス価格も2LDK(58平方メートル台)で2700万円から、3LDK(68平方メートル台)で3100万円からという価格帯だ。80平方メートル台でも4300万円台で取得が可能だ。全戸数の8割ぐらいが3000万円台だった。

 所有権と定借のほか、立地条件の違いはあるが(品川区と港区というブランドもあるが)、隣駅の天王洲周辺のマンションは坪単価200万円をはるかに突破している。品川駅の高輪口方面では坪単価300万円、400万円の世界だ。今回の「品川」は、品川エリアの他物件と比較すると破格の安さともいえる。

 東京建物は申込者の特性などを公表していないが、30歳代、2人家族の来場者が多かったというから、おそらく、将来子どもが生まれても住める条件が揃ったマンションとしてこのマンションを検討しているに違いない。

 定期借地権付きマンションが供給されだしてから10年以上が経過した。これまで供給された定借マンションは約1万4000戸程度だから、微々たるものだ。多くのメリットがありながら思ったほど普及しないのは、定借期間が短かったり、地価下落(定借は地価水準が高いほど効果がある) 、所有権へのこだわりなどがその原因と考えられるが、今回の「品川」がそんな停滞ムードを一挙に吹き飛ばすのではないか。

 そういえば、来年には港区港南4丁目で700戸規模の定借マンションが供給される。坪単価は140万円台になりそうだから、こちらも圧倒的な人気を呼ぶのは間違いない。お金持ちの高齢者や元気のある若年層が都心へ都心へ流れていったら、郊外はどうなるのだろうと、一方ではそんな心配も高まってくるが…。

(牧田 司記者 12月13日)