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創立20周年に敢えて営業マナーから学び直す
藤和不動産流通サービス(10月27日)
 

 藤和不動産グループの売買・賃貸仲介会社、藤和不動産流通サービスが、今年創立20周年を迎えた。同社はこれを機に、従来からグループで使っていた愛称「りぶ」を全店舗に掲げるCIを実施。ユーザー向けのキャンペーンを展開している。

 同社は、もともと藤和不動産のマンションユーザーの買い替えを囲い込むために出来た会社で、各店舗がきっちり地域に密着した営業をしている反面、ブランドイメージは極めて地味で、大手仲介会社のなかでも目立たない存在だった。三井・住友・東急の不動産流通御三家、野村・大京・有楽・三菱、そして信託系といった第二集団に次ぐ、「第三集団」が定位置だ。だから記者は最初、今回のキャンペーンを「ブランドイメージを引き上げ、他社に伍していくためのもの」と考えていた。

 しかし、そうではなかった。「もちろん、今回のCIは地域のお客様に親しみやす分かりやすい名称にしよう、というもの。しかし、そうしたお客様に対するアピールとともに、襟を正して≠ニいうコンセプトで、スタッフに向けたキャンペーンを展開していくことに、大きな目的がある」と話すのは、同社・木本輝生取締役。「数字、数字と幹部が言っていると、営業マンもそれしか考えられない人間になっていく。どれだけお客様の役に立てるか、お客様の役に立てる事をあと1つ考えられるかを営業スタッフに染み込ませるためのキャンペーン」とは、今回の企画を統括する、同社仲介営業部の吉見栄祐部長。ここまで書けば分かるとおり、同社は創立20周年を機に、あえて「顧客主義」というサービス業の原点を、一から学びなおそうとしているのだ。

 その立ち返り方≠ェ凄い。同社は、今回のキャンペーンに合わせて「営業マナーのチェックシート」を作成。約100名の営業スタッフはもとより、本社社員、役員までが毎週自己チェックをしている。チェックシートの中身は、「お客様に対していらっしゃいませ、と大きな声で言いましたか」「お客様の電話を、呼び出し1回以内で取りましたか」といった、営業マナーの基本中の基本が30項目あまり。記者もそのチェックシートを見せてもらったが、新入社員のマナーテキストとほぼ同内容に思えた。これを、同社の全社員が毎日のように反復していくのだ。

 「えーっこんなところからやるの?≠ニいう意見もあったが、こんなところからやる=A徹底することに意義がある。仲介のブランドイメージというのは、結局個々の営業マンにある。これまでCSに目を向けてこなかったわけではないが、 20年という月日の中でおざなりになっていた感もある。当社のお客様は、ほとんどが個人ユーザー。だからこそ、お客様に対するマナーを反復習得することで、統一化と習慣化を図らなくてはならない。これを短時間でやる。時間をかけるのは進歩≠ナしかない。必要なのは進化=B根っこから、心から変わるには、まず形から入ることも重要」(木本取締役)。

 もちろん、精神論ばかりを先行させるわけではない。独自の営業戦略も練っている。

 「他社のように、店舗を増やして人員を増やしてという拡大戦略は、ある規模まで行くと苦しくなってくる。我々の同業他社に対するアドバンテージというのは、賃貸事業の比率が高いこと。ここから派生する売買情報は大変なものがある。また、賃貸管理=プロパティマネジメントは安定収益であり、個人資産家だけでなく、法人やファンド等への売買取引が見込める」(木本取締役)。現在、売買仲介売上利益と賃貸管理のそれは、ほぼイーブン。まず、賃貸管理を安定・拡大させることで、売買へのリピートを狙っていく。ひとまず今期は、経常利益を前年比1億円増とすることが目標。上期目標は無事クリアしたという。

 「今回のキャンペーンは、やがてボディブローのように効いてくるはず。成果があがり、スタッフの中身が劇的に進化≠キれば、その次はいよいよネットワーク整備が見えてくる」(同)という。他社との拡大競争に背を向け、あえて顧客主義の徹底に注力する同社の成長に期待したい。

(福岡 伸一記者 10月27日)