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宅建業者登録制度について考える(10月21日)
 

 宅建試験が終わりました。受けられた方はどうだったでしょう。さて、宅建資格を持っている方も持っていない方も、以下の問題について考えてみてください。

今から5年前の4月1日、宅建業者免許を取得し晴れてA不動産の社長として世間に認知されたB社長。その夜、社員と祝杯をあげました。B社長は商用の帰りがけでしたので、車で来ました。帰る頃には相当の酩酊状態でしたが、「家に帰るぐらいなら大丈夫だ」と、ハンドルを握りました。ところが、家の近所の交差点で、突然飛び出してきたOLを撥ね、重傷を負わせてしまったのです。 B社長は、業務上過失傷害や道路交通法違反などで検察送りとなり、数ヵ月後判決が下り、初犯であること、事故後の処置を素早く行ったことなどで情状酌量され、禁錮1年(執行猶予1年)が確定しました。

禁固刑が発覚し宅建業者免許が取り消しになることを恐れたB社長は、腹心のC専務に相談しました。C専務は「社長、大丈夫。ばれなければ免許取り消しにはならない。せっかく事業も順調に伸びてきたのですから、ここは二人だけの内緒話にしておきましょう」とB社長を説得。そのまま管轄官庁に届出をしないで営業を続けました。

さて問題です。宅建業法上、正しいのは次のうちどれでしょう。

@ 禁錮刑が確定したのだから、監督官庁から免許取り消しの通達がなされた時点で宅建免許は取り消される。

A免許取り消しとなることを知りながら、監督官庁に届け出なかったB社長は、宅建業法違反に問われる。

B免許取り消しとなることを知りながら監督官庁に届け出なかったので、B社長はもちろん、C専務も処分の対象になる。

CC専務の言う通りばれなかったので、今日まで免許取り消しはなされていない。

DC専務の言う通りその後ばれなかったが、免許更新時の今年4月免許取り消し処分となった。

 正解はDです。宅建業法には禁錮刑以上の刑が確定したことを報告しなければならない義務はないので、ばれなければ営業は続けられるのです。しかし、免許更新時には、監督官庁は届け出た書類をもとに役員の刑罰の有無を調べるので、永遠にばれないことはありえません。

 @も正解のように思われますが、監督官庁は届出がない限り役員の刑の有無を調べないので、刑が確定しても即免許が取り消されるわけではないのです。Aも正解のようですが、宅建業法第9条(変更の届出)には、宅建業法第5条3に該当する犯罪を犯しても、届出しなければならない義務はありません。よって、BにあるようにC専務が宅建業法上の責任を問われることもありません。

 この問題は、ある事実をもとに東京都に取材したうえで作成したものです(※ただし、実際の出来事ではありません)。改めて法治国家の怖さ・矛盾を感じませんか?。われわれ国民の犯罪歴というものはしかるべき手続きを踏めばたちどころにわかるという怖さ、ばれなければ何をやっても法律に問われないという矛盾。社会正義・道義は法の前では無力なのでしょうか。

 ちなみに、東京都の宅建業者は約2万4000業者。免許更新は5年ごとですから、逆算すると都では毎月400件もの更新審査を行っています。更新事務のほか変更届出の事務もありますから、諸々の審査件数は数百件に上ります。1件の審査に約 1 カ月、それを4人の職員でこなすそうですからそのコストも膨大なものになります。審査に要する手数料は3万3000円。これでは自治体の財政赤字体質は改善されません。受益者負担の考えを導入してはどうでしょうか。

(牧田 司記者 10月21日)