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「女性の視点」にとことんこだわる
ナイス「ヴィニーチェ」(10月20日)
 

 シングル女性やDINKSを意識した、いわゆるコンパクトマンションが市場に溢れ返って久しいが、そうしたなか目立たず地道に「女性向けマンション」作りに没頭しているデベロッパーがいる。ナイスだ。

 同社は昨年夏、インテリアコーディネイターや設計士など4名の女性が中心となり、女性向けマンション「ヴィニーチェ」プロジェクトを立ち上げ、女性向け会員組織「ヴィニーチェクラブ」の立ち上げを経て、11月、「ヴィニーチェ桜新町」を発売。ファミリーマンション一辺倒で、どちらかといえば野暮ったいイメージさえあったナイスの既存マンションとは180度違う商品を提案した。白を基調にした明るい室内に、ピアノ塗装の居室扉、部屋を自在に仕切れるスライディングウォール、奥行きを深くしたキッチンのヌックカウンターなど女性好みの提案と、高い仕様が受け入れられ、38戸を瞬く間に売り切った。

 この「桜新町」の成功にあぐらをかかず、「もっと女性に受け入れられるマンションを作ろう」とヴィニーチェ企画スタッフが取り組んだのが、オリジナルの水周り(洗面化粧台、風呂、キッチン)制作だった。まず、ヴィニーチェ会員ホームページ(現在、会員650名)で、これら水周りに関する詳細なアンケートを実施。松下電工と共同で、アンケートで得られた100名余の「女性のこだわり」(主として、20〜40代のシングル女性)をふんだんに盛り込んだ商品を開発した。

 もっとも、こうしたアンケート結果の反映は、他のデベロッパーでもやっている。同社が凄いのは、そうして出来上がった「試作品」をヴィニーチェ会員に実際に 触れて もらい、得られた「苦情」をもとに、さらに改良したことだ。その「モニター会」では、スタッフも気がつかない「目からうろこ」の意見が飛び交った。

 例えば、洗面化粧台。モニター会で出たのが「ドライヤーは毎朝すぐ使えるようにしておきたいけど、コードが散らばるのは嫌」という意見。そこで、ドライヤーフックを設け、鏡裏収納の底を抜き、そこから鏡裏収納に設けられたコンセントにつなげるようにした。使わないコードは、鏡裏に隠れる仕組みだ。「とにかく、掃除をしやすくしてほしい」という意見も多かった。そこで、水栓周りは水滴を落としやすいスローブ状とした。

 また、アンケートでは洗面所で化粧をする女性が多くを占めたが、一方で洗面化粧台の下はスツールと収納スペースとどちらがよいかとの質問には、 「スツールより収納が欲しい」という意見が8割近くに上ったため、収納を充実させた 。引出しは、口紅、化粧水のビン、スプレーなどしまうものの高さに応じて 3 段全ての高さを変え、鏡裏収納は「充電式歯ブラシをそのまま置ける高さが欲しい」という意見を取り入れ、約30センチの高さの仕切りとした。大型ティッシュケースもそのまま入る大きさを確保している。

 次にシステムキッチン。 独身女性の幅広いニーズに対応するため 、ファミリーマンションでも採用が少ない、大型中華なべがそのまま入るシンクとした。狭いスペースをとことん活用し、掃除もしやすいよう、I型をメインに、コンテナ収納を採用する。

 ユニットバスは、シャワーを浴びているときでも全身が映る縦型ミラー、「洗濯物は部屋干しがメイン」ということから、小型ユニットでは珍しい 2 本の物干しバーをつけた。掃除がしやすいよう配慮し、浴槽エプロンの着脱も簡単なものが採用されている。これらの商品は、ほとんどが既存商品の小改良で済んでおり、コストに跳ね返ることはないという。

 同社は現在、INAXと共同で、ヴィニーチェ仕様のトイレ制作に取り掛かっている。まもなく試作品が完成し、11月に開く会員モニター会の意見を踏まえ改良する。これら「ヴィニーチェ仕様」は、 今後分譲予定のコンパクトマンション に導入 していく 予定だ。

 数多のコンパクトマンションが市場に溢れる中、同社の供給シェアは微々たるものだが、手を抜かず、きらりと光る「必勝マンション」を作りつづけてほしい。

(福岡伸一記者 10月20日)