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「ノンレールサッシ」の普及・促進を(9月6日)
 

 立山アルミニウム工業が「ウォーキング」というブランド名でノンレールフラットサッシを発売して3年近くになる。サッシの下枠を完全になくし段差を解消したもので、サッシ業界にとって革命的な開発ともいわれた。

 今から3年前、このノンレールサッシが採用された東急不動産の「日吉」のマンションのモデルルームを見学したとき「これはヒットする」と直感した。かつての低床バス、最近のディスポーザー、オール電化マンションを見たときと同様の感動すら覚えた。

 低床バスやディスポーザー、オール電化マンションは予感どおり、瞬く間に普及した。いずれもマンション入居者のニーズにマッチしていたからだ。それと、商品を開発したメーカーがいずれも業界のトップだったのが大きな要因と考えられる。

 低床バスは、ほとんど同時期にTOTO、松下電工、INAXの浴槽メーカーが発売した。ディスポーザーも施工トップの長谷工コーポレーションとINAX、日商岩井の3社の共同開発という形で最初に採用された。オール電化も東京電力など各電力会社という独占的な企業が後押しし、松下などの大手が高性能の機器を開発したのが普及ピッチを上げた。

 ではノンレールサッシはどうか。立山アルミによると、開発初年度は 首都圏マンション市場での採用戸数は 15,000 戸で、同社の前期比シェアを約 2 倍に上昇させたという。その他医療・福祉・公共施設の受注状況も全国的に増えており、その数は約300物件になっているという。

 これはこれで大きな数字だが、記者が期待したほどの伸びではない。低床バスは最初の採用から3年ぐらいで全マンションの3分の1ぐらいに採用されたと記憶しているが、ノンレールサッシを採用しているマンションは 10 物件に1物件あるかどうかだ。

 なぜ伸びないのか。一つには、立山アルミが業界の5位ぐらいのメーカーで、追随するメーカーもあるものの、立山アルミの特許が同様の商品開発を阻んでいるようだ。これが低床バスやオール電化と異なっている点だ。

 もう一つは、ノンレールサッシそのものは他のサッシと値段は同じだが、直床方式では採用ができず、二重床方式でないとダメだという施工上の問題もあるようだ。このところのマンション施工単価の上昇と、マンション販売競争の激化がコスト競争に拍車をかけており、そのしわ寄せがノンレールサッシにも及んでいると考えられる。マンション施工トップの長谷工コーポレーションは基本的には直床方式だ。

 さらに、普及促進を阻んでいる要因に、ノンレールサッシの特徴を最大限に生かすのに必要なバルコニーに敷くデッキ価格が高すぎることがあげられる。現在販売されているデッキ価格は1平方メートル当たり2万〜3万円で、バルコニー面積にもよるが数十万円にはなる。マンションデベロッパーとしては、そこまで費用をかけてノンレールサッシを採用するメリットを認めないようだ。ユーザーもまたオプションでデッキにそれほどの金額をかける余裕がないとも取れる。

 しかし、記者はあえてノンレールサッシの採用を薦めたい。リビングとバルコニーの間をフラットにすることは、ユニバーサルデザインの普及・促進に大きく貢献するからだし、その効果は金額に換算して数十万円どころか数百万円もの効果が期待できる。

 掃除が楽というのはいうまでもないが、転んで怪我をしない、布団や洗濯物の出し入れが楽、裸足でバルコニーに出られる、ワゴンでものを運べる、タバコを吸ったり読書をしたりするスペースが生まれる、などなどバルコニーの活用方法が広がり、従来型のサッシでは考えられない数々のメリットが生まれる。

 そこで提案。従来型の段差のあるサッシとノンレールサッシをマンションモデルルームに同時に設置して、実際にユーザーに体験してもらうことだ。実際にノンレールサッシの利点を体験してもらえれば、間違いなく売れ行きもアップすると考えるのだが…。

(牧田 司記者 9月6日)