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戸建てを越えたヒューザーのマンション (8月30日)
 

 「住宅の質の基本は広さだ」と信じている記者がもっとも好きなデベロッパーの1社、 100 平方b超マンションのリーディングカンパニーを標榜するヒューザーの話をしよう。

 昭和50年代の半ば、まだ60〜66平方メートルの3DK〜3LDKが主力のころ、当時のリーディングカンパニーが「広めの3LDK」と銘打って堂々と 60平方メートル台のマンションを売っていた。まだ若かった記者は憤慨して「どうして 60平方メートル台の3LDKが広いのか、その根拠を示して欲しい」と取材に押しかけたことがあった。

 その一方で、豪華な都心の億ションを見るにつけ、「どうしてデベロッパーは一般サラリーマンが買える広めのマンションを郊外で作らないのだろうか」と思ったものだ。

 あれから20余年、今では100平方メートルマンションは当たり前になりつつある。地価下落のおかげだが、結構なことだ。

 記憶は定かではないが、一般サラリーマン向け100平方bマンションの第一号は、明和地所が三鷹で分譲して圧倒的な人気を呼んだ「クリオレミントンハウス武蔵野」(100戸) ではないか。記者は快哉を叫んだのを覚えている。平成8年 9月だった。

 ヒューザー ( 当時ハウジングセンター ) が 100 平方メートルを供給しだしたのは、それから少し後だったと記憶している。「グラントステージ多摩川」 (34戸) などは全てが100平方メートル以上ではなかった。そして平成 10 年、川口のバス便、しかも準工地域という悪条件の中で早期完売した「グランドステージ青木公園」 (22 戸)が、東京以外での初めての100平方メートルマンションだったように思う。

 その同社は、今では「私たちにとって100平方メートルはもはや目標ではなく、起点です」 ( 同社会社案内、小嶋進社長の挨拶より)と言い切る。これからは150〜160平方メートルを目指すという。しかもコストアップ要因につながる外断熱工法にも積極的で、すでに6棟を着工した。

 用地取得段階で他社と競合するような用地を買わず、商品企画では過剰な設備仕様を排し、1現場あたり3千万円はかかるという敷地外現地モデルルームを作らず、広告宣伝も極力抑えるなど、あらゆるステージでコストダウンを図っているのも、圧倒的な価格競争力を維持できる秘密だ。

 坪単価250万円が相場と思われる茅場町の「グランドステージ茅場町」 (36戸) は202万円だし、200万円以上が相場の住吉の「グランドステージ住吉」(67 戸) は150万円だ。「住吉」は現地看板と折込チラシ広告だけで約8割が契約済みだ。

 価格志向が強く、値付けを誤るとさっぱり売れない魔の伊勢崎線≠フ梅島では168平方メートルのプランを盛り込んでいる。 18 メートルスパンでLDが31畳大、主寝室が12畳大、キッチンが6畳大以上、玄関・ホールは7畳大ある。価格は6980万円と高いが、単価は137万円と割安だ。そして、何よりも一戸建てを越えた居住性が確保されているのがいい。

 同社は今年、勝ち残り戦略として極めて合理的なコスト・コントロール手法を確立した。「デベコン」 ( デベロッパーとコンストラクターを組み合わせた造語)と呼ぶもので、海外で資材を調達し、自ら施工するという体制を作りあげ、工事会社への支払いを手形から現金払いにするなどして大幅なコストダウンを実現した。すでに第1号案件として横浜市鶴見区で全 150平方メートルのマンションに取り組んでおり、第2号案件も市川市で着工する予定だ。

 同社の平成 16 年3月期決算の売上高は124億6000万円で、経常利益は12億7000万円を計上した。売上高経常利益率は10.2%で、上場しているマンションデベロッパーと比較してもトップクラスにランクされる。

 業界の常識を覆し、徹底して顧客志向を追及する同社のような企業が伸びるのは当然か。

(牧田 司記者 8月30日)