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富める者はより富み、貧しき者はより貧しく
開発ラッシュが続く港区に富裕層が集中(8月25日)

 汐留、六本木ヒルズに次ぐビッグプロジェクト、三井不動産など6社の防衛庁跡地「東京ミッドタウンプロジェクト」 ( 開発面積約7・8ヘクタール、総事業費3700〜3800億円 ) が着工され、品川駅を中心に大規模マンションが続々供給されるなど、港区での開発が脚光を浴びている。なぜこれほど港区が賑わうのか。その背景を住民の納税状況から探ってみた。結果は驚くべきものだが、今後の事業展開に参考になるはずだ。

 港区の資料によれば、平成15年度の特別区民税の課税標準額が2千万円を越える納税者 ( 以下、富裕層 ) は 4477人に上る。全納税者に占める割合は5・2%だ。課税標準額とは、所得から基礎控除、扶養控除、社会保険控除など諸々の控除を除いた額なので、実際の所得は最低でも2千数百万円になる。

 この数字がどれほどすごいかをみてみよう。

 都内23区の15年度の課税標準額が2千万円以上の富裕層は4万4350人だ。全納税者に占める割合は1.2 %。つまり、23区全体で富裕層は100人に1人の割合だが、港区は100人に5人が富裕層だ。23区の全富裕層の実に約10%の人が港区に住んでいることになる。

 実際の所得金額もケタはずれだ。港区の全納税者の総所得額は約6千839億円だが、富裕層はそのうち約39.0%に当たる約2千667億円を稼ぎ出している。富裕層1人当たりの所得額は約5千957万円にも達している。

 所得割額、つまり税金の納付額がまたすごい。港区全体の所得割額は約412億円だが、富裕層はそのうち56.5%に当たる約233億円を収めている。わずか5.2%の富裕層が区民税の半分以上を収めていることになる。

 もともと港区は外国人居住者が1割に達するなど富裕層が多い区ではあるが、郊外部から富裕層が流入していることもある。富裕層の都心回帰が象徴的に現れているのが港区だ。

 3年前汐留で分譲された、全1000戸の3分の1が億ションだった「東京ツインパークス」 1 期 (543 戸 ) では、申込者の居住地トップは神奈川県の15.1 %で、千葉、埼玉県を合わせると実に28.3 %にものぼっていた。

 今から 10 年前、平成5年度の港区の富裕層は4.2%に当たる3千3283人だった。この10年間で毎年100人以上の富裕層が増えている計算で、区全体でみても7人に1人の割合で富裕層が増えている。

 興味深いのは、これほど富裕層が増えている一方で、課税標準額が120万円未満の納税者はこの10年間で約1万 7000人 ( 構成比 21.6 % ) から約2万2000人 ( 同 25.3 % ) に増加していることだ。その逆に中低所得層といえる課税標準額が120万円〜550万円未満の層は約4万4000人 ( 同 55.4 % ) から約4万3000人 ( 同 50.2 % ) に減っている。低所得層の増加は高齢化社会と長引く不況の影響ということが考えられる。

富める者はより富み、貧しき者はより貧しく≠ニいう図式が浮かび上がってくる。

 参考までに 15 年度の23区民の退職所得は総額約13億円だが、そのうち約11億円が課税標準額2000万円以上の富裕層が受け取っている。

(牧田 司記者 8月25日)