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根付くか不動産流通業界のインターンシップ(8月12日)
 

 三井不動産販売(岩崎芳史社長)は、慶応大学商学部、明治大学商学部、法政大学経営学部を対象にした履修科目型のインターンシップ制度を導入した。単位取得可能な正規履修科目としてインターンシップの門戸を開いたのは、不動産流通業界でははじめてとなる。

 学生には、三井のリハウスのブランドマーケティング、物件調査、建物調査、時間貸し駐車場事業「リパーク」の現地調査、データ分析、販促計画策定など、かなり現場に密着したカリキュラムが与えられ、実際に営業活動にこそ従事させないものの、売買契約書の作成実習まで組み込まれた本格的なものとしたという。

 同社は平成14年からインターンシップを導入してきたが、これまでは新築マンションの販売業務を中心にしたカリキュラムだった。今回は、仲介業務に的を絞り込んだものであるところが画期的だ。同社に言わせると「どんどん現場に出てもらう、かなりハードなもの」なのだそうだ。

 流通業界では、同社のほか東急リバブルがインターンシップを導入したことがあるが、他の業界に比べてあまり積極的な動きはない。その大きな理由は、不動産仲介という仕事が、学生が考える以上に「ブルーカラー」な仕事であるからだろう。実際、仲介業者の仕事は、他の業界に比べてかなりキツイ。休みも少なく、残業も多い。売主と買主という利益の相反する両者に板ばさみにされ、やがては「ノルマ」という重しものしかかってくる。現場の営業マンを見ていれば、敏感な学生ならすぐ察知するだろう。

 だが、そうしたネガな要素を含んで余りあるほどの「喜び」が、仲介という仕事にはあることを、学生達は知らないであろう。一生に幾度も無い、人の人生を左右する「住宅購入」というイベントに立会い、「お客様が心の底から喜んでくれる」瞬間に出会える。こんなダイナミックな仕事は、他にはないはずだ。この「喜び」を学生達に伝えることこそ、インターンシップの役目ではないだろうか。

 それに気がついた学生も増えてきているようだ。リクルートが不動産流通会社と合同で行っている流通業界の就職セミナーは毎回盛況で、学生達は仲介営業のシミュレーションやパネルディスカッションを通じて、仲介営業という仕事にかなりの興味を示しているという。残念ながら、不動産仲介の営業は「十年一日」のごとく変わらずに来た。それというのも、この業界は狭い業界内だけで、「業界擦れ」した人間が還流してきたからだ。これを変えるには「新しい血」が必要だ。

 狭くて古い業界に、フレッシュな風を吹き込む努力を、もっと業界あげて取り組んでもいいと思う。

(福岡 伸一記者 8月12日)