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「防集は行政、市民団体、専門家の連携重要」宇野氏


宇野氏

 都市計画コンサルタントのアトリエU都市・地域空間計画室代表・宇野健一氏が3月21日、多摩市のNPO法人「多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議」が主催した講演会「まちせん木曜サロン」で「プランナーが見た復興の現状と課題」と題する講演を行った。参加者は約20人。記者も興味があったので参加した。

 宇野氏が取り上げたのは、東日本大震災の被災地の気仙沼市登米沢地区の「防災集団移転促進事業(防集)」についてだった。ご承知の方も多いだろうが、まず、「防集」とは何かを説明しよう。

 「防集」とは、土地区画整理事業とともに震災復興の目玉となる事業だ。区画整理事業は、市街地の復興や公共施設、宅地などを一体的に整備する比較的大規模なものであるのに対し、防集は被災により災害危険区域に指定された住居の集団移転を目的とするものだ。施行するのは地方自治体で、国交相の認定を受けたうえで決定する。事業に必要な経費は全て「東日本大震災復興特別区域法(復興特区法)」に基づき国費でまかなわれる。

 事業の流れは次の通りだ。まず、自治体は被災した宅地(農地などは対象外)を買い取り、その土地に対しては必要な建築制限を設ける。自治体は移転先となる住宅団地を整備し、その土地を被災者に譲渡、または賃貸する。そこに被災者は住宅を建てるのだが、敷地の取得や住宅の建設に際して住宅ローンを利用する場合、自治体が利子相当額を助成する。従来、整備する住宅団地の規模は10戸以上とされてきたが、地域の実態にあうよう5戸以上に条件緩和された。原則として全員合意が求められるが、賛成者のみで事業計画を進めてもよいとされている。

 宇野氏は気仙沼市登米沢地区のコミュニティリーダーやNGO組織「SVA」らとともに2011年の秋から事業に携わり、昨年5月、他の4地区とともに気仙沼市初の6世帯の防集大臣認定を取得した。

 宇野氏はいち早く大臣認定を取得できた要因として、被災世帯が小規模であったこと、地元に信頼の厚いコミュニティリーダーが存在したこと、SVA による専門家への協力依頼が早い段階で行われたこと、被災者の声を丁寧に聞いたことなどをあげた。宇野氏はまた、平常時から顔の見える人間関係を築いておくことが大切であり、行政、市民団体、専門家の連携も重要だと話した。

 防集は現在まで被災3県の24市町村179地区30,989戸の事業計画が決まっている。

◇     ◆     ◇

 「多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議」について説明しよう。設立されたのは平成17年2月。会員数は28名。設立趣意書に「ニュータウンを愛する生活者の一人として、また、地域で活動するまちづくりの専門家として、住民のニーズを汲み取り、地域の様々な課題を解決するため、地域住民との協働によるまちづくりに取り組むことが目的」とあるように、会員は建築、まちづくり、ランドスケープなどの専門家のほかに研究者、行政マン、学生など一般市民も含め様々。

 その活動は多岐にわたっている。多摩ニュータウンの初期開発地区である諏訪・永山地区の再生、地域住民の住まいづくりや暮らしの支援、多摩ニュータウンの活性化やコーポラティブハウスの建築、外断熱マンション研究、環境・農業問題、学生の研究発表会などで、毎年正月には地域の落語家を呼んで落語会も行っている。

 「まちせん木曜サロン」もその一つだ。毎月1回、活動拠点である諏訪商店街の「すくらんぶるーむ」で行っているもので、先日は実に87回目だった。宇野氏も多摩市在住。

 「すくらんぶるーむ」の賃借料もバカにならないだろうと思った記者は事務局長の松原和男氏に「こんな立派な活動をされている。市に申請したら補助金が出るはず」と話したら、松原氏は「補助金で活動の手足を縛られるくらいなら、ないほうがいい」と言下に否定した。記者などは揉み手叩頭して受け取るだろう。志が違う!

 
「まちせん木曜サロン」

震災復興区画整理 58カ所で多摩NTしのぐ数千ha(3/25)

(牧田 司記者 2013年3月25日)