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 「閖上に希望と勇気を」

中国人画家・常嘉煌氏が100号絵画「祈願の櫻」寄贈


「祈願の櫻」 (100号、油彩)

 閖上(ゆりあげ)に希望と勇気を=|−東日本大震災から2年が経過した3月18日、平山郁夫にも師事したことがある中国人画家・常嘉煌(ジョウ カコウ)氏が描いた100号の油絵「祈願の櫻」の贈呈式が名取市立閖上中学校で行われた。高橋澄夫校長をはじめ全教職員・生徒が出席し、佐々木一十郎・名取市長、陳明煌(チン メイコウ)・駐新潟副領事兼政治文化室長、贈呈式の仲介の労を取った久米信廣・第三企画社長らも出席した。


プレハブの 閖上中学校

 常氏は、「来日して28年間、 日本の皆さんには多くの友情と支援をいただきました。 日本の民話に『鶴の恩返し』がありますが、私の気持ちは鶴と同じです。お世話になった日本の皆さんへの恩返しです。 震災で心身ともに傷ついた皆さんに私なりの応 援をしたいと考え、絵画をお送りすることにしました。 大津波に飲み込まれたのに1本だけ残った陸前高田市の『希望の一本松』と、津波をかぶっても花を咲かせた名取市のサクラを桜をイメージして絵画を制作しました」と挨拶。


常氏

 佐々木市長は、「希望の松と閖上小・中に咲いていたサクラをモチーフにしていただいて非常にうれしい。先生との出会いを大切にし、みんなで立ち上がって未来を切り開いていきましょう。私も、安心して暮らせる街の復興に必至で取り組みます」と応えた。

 また、陳氏は「今回の震災に際し改めて心からお見舞い申し上げます。私は四川省で起きた地震のときも日本の救援隊と一緒に現地に駆けつけました。人間の絆がとても大切なことを学びました。中国の政府も大使館も総領事館 も復興へのサポートをしていきたいと考えています。このような文化交流を深め、近くて近い仲 になるよう望んでいます。落ち着かれたらぜひ四川省の学校との交流も行っていただきたいと思います。全力でその橋渡しを行います」 と語った。

 高橋校長は「前に進む勇気と元気を与えていただきました。職員、生徒一同、感謝します」と話し、生徒会代表も「敦煌はヨーロッパやアジアの文化が日本に伝わるのに大きな役割を果たしたことを歴史で学びました。この絵はとても力強く、つらいことがあってもこれを見れば元気になる気がします」と感謝の言葉を述べた。

     
佐々木氏               陳氏                  高橋氏


生徒会長

  
除幕式

 常氏は1950年、 “敦煌の守護神 ” と呼ばれている敦煌石窟芸術家の父、故常書鴻氏と、 同じく敦煌石窟芸術家であった母、故李承仙氏の長男として敦煌に生まれる。62歳。1984年来日。東京芸大で平山郁夫画伯などに師事。1988年には、日中友好のシンボルとして父母が描いた奈良・法隆寺のふすま絵「ふたつの飛天」の手助けも行っている。その後も絵画を通じて日中友好の活動を行っている。

 2010年8月には、長年にわたって住んでいた埼玉県に対し感謝の意をあらわすため80号の油絵「崋山」を寄贈。絵は伊奈学園総合高等学校に常設展示されている。

 故郷では父母の遺志を継いで「敦煌現代石窟」に取り組んでおり “ 敦煌の子 ” と呼ばれている。国美術家協会会員。西北師範大学敦煌芸術学院(甘粛省ではトップクラスの大学)教授、中国敦煌現代石窟センター代表。


贈呈式

 仙台市に隣接する名取市は東日本大震災で死者911人、行方不明者41人、半壊以上の建物5,000棟以上の被害を受けた。死者・行方不明者は全て津波による被害。 閖上地区は海から1km以内の木造住宅はほぼ全て流失、壊滅的な被害を受けた。閖上中学校は他の中学校と同様、卒業式で授業は午前中に終了したため自宅で被災したり逃げる途中で津波に飲み込まれた生徒14人が犠牲になっている。現在はプレハブ校舎。4年後に新校舎が建設される予定。市内の小学生徒の人的被害は6人。


佐々木市長と常氏


「がんばるぞー」

「みんなと別れたくない」名取市の仮設住宅・三浦さん(3/21)

(牧田 司記者 2013年3月21日)