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  地価上昇、建設資材価格上昇じわり マンション価格は上がる

 

 国土交通省は2月26日、平成24年第4四半期 (10/1〜1/1) の主要都市・高度利用地150地区の地価動向を発表した。上昇が51地区(前回34)、横ばいが74 地区(前回87)、下落が25地区(前回29)となり、上昇地区が全体の約34%(前回23%)を占めた。前回からさらに上昇を示す地区が増加し、引き続き横ばいが最多の変動率区分となった。

 記者は、これで3月下旬に発表される地価公示は横ばいから大都市圏では上昇基調に転じる結果となるのを確信した。と同時に、当日発表された「建設労働需給調査結果」と「主要建設資材需給・価格動向調査結果」にも注目した。前者は平成25年1月10日から20日間、後者は平成25年2月1日から5日にそれぞれ調査した結果を公表したものだ。労働需給動向では、型わく工(土木)の不足率1.6%を筆頭に8業種全てで不足となっており、全体で0.8%の不足率となった。

 後者は、生コン、鋼材、木材など7資材13品目について価格、需給、在庫などの動向を調査もので、価格動向では異形棒鋼、H形鋼、石油、生コン、骨材などがやや上昇した。需給動向ではセメント、生コン、骨材などが「ややひっ迫」している。価格動向、需給動向とも被災 3 県の数値が全国平均の数値を上回った。また、向こう3カ月の価格動向予想では、石油が「やや上昇」(45都道府県)となっているほか異形棒鋼、H形鋼、アスファルト合材は「横ばい」予想より「やや上昇」と予測する都道府県が上回った。

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 この地価・建設労働・建設資材動向からすると、今後マンション価格も上昇することが鮮明になった。業界の中には「建築費の上昇懸念は年度末を迎えて毎年のように繰り返される現象で、一過性のものに過ぎない。5月ごろになると落ち着くはずだし、消費税の駆け込みの影響はあるかもしれないし、円安が進み原油価格の先物が上昇すればマンション建築費にも影響が出るかもしれないが、巷間言われるほど上昇はしない」という声もあるが、記者は上昇は避けられないと見る。

 地価、建築資材動向がその根拠だが、もう一つはゼネコンの価格上げ圧力が強まることだ。

 受注産業の悲しさか、ゼネコンはバブル崩壊後ほぼ一貫して業績低迷が続いている。公共工事が減り、民間の工事も受注競争が厳しいためだ。今年に入って、準大手が相次いで業績の下方修正を行ったのもこうした構造的な問題を抱えているからだ。

 先に平成25年3月期の業績予想を建設コストの上昇などを理由に大幅に下方修正した前田建設工業を例にしよう。同社の平成24年3月期(連結)の受注工事高は2,933億円だ。内訳は官公庁が778億円、民間が1,968億円、海外・不動産が186億円だ。全体に占める官公庁の割合は26.5%だ。

 一方、10年前の平成14年3月期(個別)では、受注高3,641億円のうち官公庁の受注高は41.0%に当たる1,494億円だった。この10年間で官公庁の受注高は半減し、比率も大幅にダウンしていることがわかる。

 官公庁の落ち込みをカバーしようと民間に力を注いできたわけだが、受注競争の激化から今期は当初予想の48億円の純利益から一転して108億円の純損失となる見込みだ。同社はバブル崩壊にも耐えた老舗で、これまでもいいマンションを建設してきた。デベロッパーには発注を増やし、値下げ圧力をかけないようしていただきたい。

 しかし、ゼネコンは来期当たりからは震災復興の公共事業の増加が見込まれる。復興特需は久々にゼネコンを潤すのではないか。そうなれば、主客は逆転する。デベロッパーに値切りに値切られてきた積年のうらみつらみを晴らそうと値上げ圧力をかけることになりそうだ。

 さらにもう一つ、決定的な価格上昇の要因となりそうなのが市場の反応だ。あらゆる商品もそうだが、結局は価格は市場が決定する。マンション価格も同様で、安倍政権の誕生で流れは一変した。年明けのマンションの来場者数の増加などを見ると、金利先高感と価格上昇懸念からユーザーは間違いなく動き出した。3月下旬の地価公示の数値次第ではさらに活況を呈するのではと記者は見ている。サラリーマンのふところは豊でないので、それが心配だ。

(牧田 司記者 2013年2月27日)